“中の上”の悲劇 Vol.13

妻をもう、女として見れない。理想のイクメン像を強要された“中の上”サラリーマンの嘆き

重く、重くのしかかる仕事のプレッシャー。でも、妻には話せない。


「もう、何か目標を見失っちゃったんです。エリート揃いのすごく激務な部署で、どんなに頑張っても、もう上には行けない気がします。」

新しい部署になってからは忙しく、家に帰るのも遅くなった。子供は、5歳になる男の子と2歳の女の子。遊びたい盛りだ。

真面目な彼は、いい夫・父親でありたいと願っている。

「結婚するときに妻に言われたんです。家事は分担して、育児にも協力するって。もちろん、料理とかはできませんが、風呂掃除とゴミ出し、家の周りの掃除は全て僕が請け負っています。」

練馬にある妻の実家近くに家を買ったので、地元との結び付きはまだ強い。彼が家の周りを掃除していると、妻の友人から羨望の眼差しで挨拶され、そしてそれを妻は嬉々として報告してくる。

また休日は、家族4人での外出が恒例だ。そこで、妻は多くの写真を撮る。

「Instagramって言うんですかね?僕の妻は、元モデルなので、地元の中でもかなり中心的な存在みたい。週末は、家族写真を絶対外で撮りたがるんです。特に、僕のイクメン写真は好評なようで、何枚も何枚も撮るんです。」

苦笑しながらそう言った。仕事で疲れてしまった週末は、家でゆっくりしたいと懇願することも多いようだが、「私は家で子供といることが多いから、たまには外に出たい」と言って聞かない。


「彼女にとって、今まで確かに自慢の夫であったし、そしてこれからもその期待には応えたい。でも、今抱えている仕事のプレッシャーは、妻には話せない。」

仕事をバリバリにこなしながらも子供との時間を大切にするイクメン。彼女のInstagramを見ると、その写真のイメージに、実際の気持ちが全く追いついていないとこぼす。

「しょせん“中の上”サラリーマンです。都内で暮らすには彼女の稼ぎも必要なので、イクメンにしたくなる気持ちも分かります。ただ、正直それどころじゃないくらいのプレッシャーを抱えているんです。」



今唯一ホッとできる場所は、近所のジムだという。

「そこにね、少し気になっている子がいて、たまに話すんです。話すだけで、もちろん何もありませんよ?でも、妻にはもう感じない感情が湧いてきてしまって…。32歳で結婚している彼女は、会社勤めで境遇が似ているから、話が分かるんです。」

その彼女は、今まで好きになった子で唯一自分より背が低いと言う。

常に上を目指してもがき続ける人生に、少しお疲れのようだ。

社会人として、夫として、父親として。求められる期待に応えようとする姿は立派ではあるが、自分の意思を見失ってしまっているように見えた。

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