“中の上”の悲劇 Vol.13

妻をもう、女として見れない。理想のイクメン像を強要された“中の上”サラリーマンの嘆き

コンプレックス塊から這い上がった人生


彼は、3人兄弟の真ん中で育った。反抗期がひどく、高校から大学まで「よく辞めないで通った」と苦笑しながら語ってくれた。

最初に入った会社は、今の会社の子会社だった。しかし、そこで営業としての実績を買われ、親会社へ転籍。

「僕の学歴で、親会社に新卒で入社した例はないんです。異例の人事だったようです。」

彼の仕事ぶりは誰より真面目で、一生懸命。人柄が良くコミュニケーション能力に秀でていた彼は、上司からの評価が非常に高かった。


必死になりながらもがいて得た、今の地位。本社に転籍してから5年ほど経ったが、実力が認められ、今度は重要な取引先を抱える“エリート部署”に配属されることになった。

しかし、彼は何故そこまで必死になれるのだろうか?

「僕は、昔からコンプレックスがすごいんです。体がすごく小さいから、バカにされないようにって、必死に生きてきました。」

彼の身長は、162、3センチくらいだろうか。しかし、綺麗に鍛え上げられた体に合ったスーツと、ピンクのシャツと同色系のネクタイがきちんとコーディネートされており、見た目は洗練されている。第三者から見ると身長の低さは気にならないが、それがコンプレックスというものなのだろう。

大好きなはずの妻。それでもなぜ…?


「妻は、俺より身長が高いんです。付き合ってきた女の子はそんな子ばっかりです。」

昔はモデルをやっていたという美貌の持ち主で、今は在宅でエステをしている自慢の妻だ。

「すごく大好きで、3年くらいかけてやっと口説いた子です。今も自分の好きな仕事をしながら一生懸命家を守ってくれて、本当に感謝しています。」

どうやら恋愛面でも必死に努力してきたようだ。

彼は、決して家庭の愚痴を言わない。しかしだからこそ、次の言葉に言葉を失ってしまった。

「でもね、もう妻を“女”として見れなくなってしまったんです。」

どうやら、今の部署に異動後、必死でもがき続けていた彼の“張り詰めていた糸”がぷちんと切れてしまったようだ。

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