崖っぷち結婚相談所 Vol.23

崖っぷち結婚相談所 最終回:結婚とは幸せを掴むものではなく、不幸にならない選択肢

典型的な結婚できない女、杏子、32歳。

慶應大学卒業後、丸の内の某外資系金融でセールス職に就き、年収は2,000万円を優に超える。

美人だがプライドが高くワガママな彼女は、男運が悪く全くモテない。さらにハイスペックゆえ、男が近寄りたくない女ナンバーワンとまで噂されている。

婚活に危機感を持ち始めた杏子は、結婚相談所に登録した。想像以上に婚活に苦戦する杏子であったが、5回目のマッチングで出会った松本タケシ(マツタケ)に、とうとうプロポーズを受け...?!


この世界には、2種類の女が存在すると、杏子は思っている。

「プロポーズされる女」と、「プロポーズされない女」だ。

前者と後者は、一体何が違うのか。目には見えないその格差は、長いこと杏子の頭を悩ませ、苛立たせて来た。

しかし、あれほど渇望していた「結婚」が、今、とうとう自分の目の前に差し出されている。

不思議な心境だった。想像していたのとは、少し違う。身体がフワフワと浮いているような奇妙な感覚だ。それは居心地の悪いものではなかったが、映画やドラマで観るような絶頂の喜びとは、やはり異なる。

2種類の女の境目。杏子はそんな現実味のない場所に立たされているような気がした。

結婚へと向かって行った女たちは、皆同じようにこの場所を通り、向こう側へと渡って行ったのだろうか。

対岸ではマツタケと平和な家族が笑顔で待っており、元にいた場所では悪女の由香元彼の知樹が不敵な笑みを浮かべ、杏子を嘲笑っている。

昨晩はほとんど寝付けなかったが、浅い眠りの中、杏子はそんな夢を見た気がした。

根拠なく高慢で煌びやかで、ルールを知らぬ者はどんどん他者から蹴落とされてしまうような、都心・港区の婚活市場。よくよく思い返してみても、恋愛スキルの低い杏子は、婚活にロクな思い出がない。

自分はいよいよそこから抜け出し、安息の地・成城へと嫁ぐのだろうか。

しかし、杏子は気づいてしまった事実がある。そんな凄惨を極める婚活市場で、誰より自分を支え理解してくれたのは、元彼でも、マツタケでもない。

婚活アドバイザーの直人だった。

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