崖っぷち結婚相談所 Vol.2

崖っぷち結婚相談所:結婚相談所という禁断の領域。エリート美女が、市場価値を算出される!?

典型的な結婚できない女、杏子、32歳。

慶應大学卒業後、丸の内の某外資系金融でセールス職に就き、年収は2,000万円を優に超える。

美人だがプライドが高くワガママな彼女は、男運が悪く全くモテない。さらにハイスペックゆえ、男が近寄りたくない女ナンバーワンとまで噂されている。

恋愛市場で負け続け、さすがに危機感を持ち始めた杏子。そんな彼女が婚活に本腰を入れ、アクションを起こす...?!


自分は間違っていた。「結婚」は、難題であった。


「はぁ......。」

オフィス近くの『メゾンカイザー カフェ』で、杏子は一人大きな溜息をついた。

最近、めっきり溜息がクセになってしまっている。溜息をつくと3歳老けるなんて噂は信じないが、確かに30歳を過ぎた女が溜息をつく姿は美しくはないだろう。

まっすぐ家に帰るのが躊躇われ、仕事終わりに一人で軽い外食をとる理由は、部屋が結婚相談所のパンフレットと恋愛マニュアル本が溢れているからだ。先日夜中のネットサーフィンに熱中し過ぎた結果、ざっと10社近くの結婚相談所のパンフレットと、アマゾンで頼んだ恋愛マニュアル本が10冊ほど一気に届いた。

杏子がパンフレットや恋愛マニュアル本を見てまず気づいたことは、このご時世、結婚はやはり簡単に成せる業ではないということだった。だからこそ、結婚相談所というビジネスが栄え、本がここまで売れる。それは紛れもない事実だ。

しかし、仕事後のこの疲れた時間に、結婚という難題に向き合うほど、杏子はタフでもない。特に恋愛マニュアル本を見ていると、仕事で資料を作ったりプレゼンをする方が、ずっと簡単なことのように杏子は思えた。

―男性がドライブ中に道に迷ってしまっても、あなたは道順を提案してはいけません。黙ってそっと見守ることで、彼は自信を失わずに済みます―

恋愛本には、こんな不可解なノウハウが延々と続いている。杏子は、タクシードライバーにすら最短経路の裏道を細かく指示する女だ。急に人格を変えると言っても限界がある。

やはり、結婚相談所にお世話になるのが一番てっとり早いものなのかと、杏子は無花果が練り込まれたパンを頬張りながら、心は相談所へと傾いて行った。

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