東洋経済・東京鉄道事情 Vol.40

全く同じ内容の「時刻表」が多くの出版社で発行される不思議。どう違いを出しているのか調べてみた!

JTB時刻表は1925年に創刊された「汽車時刻表」から始まった(撮影:尾形文繁)

世の中には2種類の人間がいる。時刻表が読める人と、読めない人だ。私は間違いなく後者だった。それに、時刻表にはちょっとしたトラウマがあった。

大昔、編集者と行った地方の取材先で、急遽列車の時刻を調べなければならない事態が発生した。編集さんは地方出身者で、時刻表を調べるのには慣れていた。そして私にも「一緒に調べてください!」と、駅の窓口に置いてあった時刻表をポン、と手渡された。

その時、私は時刻表というものの存在を初めて知った。しかし切羽詰まった状況だったので、鬼の形相で調べている編集さんに「これ、どうやって調べるんですか?」とはとても聞けず、仕方なく何が何だかわからないページをパラパラとめくり、調べているフリをした。大変申し訳なかった。心境としては小学生が高校生の数学のドリルを渡されて「これ、すぐ解いて!」と言われているようなものである。

それ以来、時刻表には恐怖心が芽生えてしまった。



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読めるようになると楽しい時刻表

しかし昨年、ありがたいことにJTB時刻表編集部の方々と一緒に仕事をする機会に恵まれた。そうなると、時刻表が読めないというわけにはいかない。

私は特訓した。特訓といっても、友達に時刻表の読み方を教わっただけである。小学生でも数式の解き方をちゃんと教われば、高校生のドリルを解けるようになるのだ。そしてついに時刻表が読めるようになった。

読めるようになると、途端に時刻表がおもしろくなってきた。「なるほど、ここでこう乗り換えるとこっちにも行けるのか」と妄想旅もできるようになった。『時刻表鉄』というジャンルがあるのもわかる。

そのうち、この時刻表という雑誌がどうやって作られているのか知りたくなった。漫画雑誌の作り方は知っているが、ほかと同じ内容で発売されている雑誌はまず存在しない。しかし時刻表は、同じ内容のものが本屋さんで複数並べられているわけである。とても不思議だ。

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