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  • 美人探偵・貴崎桜子の事件簿 Vol.6

    美人探偵・貴崎桜子の事件簿 最終回:すべての謎が明らかに。仮面をつけた女たちの、本性が暴かれる

    「829だ!」

    「あら、今までで一番早いんじゃない?」

    驚く桜子にきりりと笑顔を見せながら、私は彼女の手を強く握った。

    「よし、桜子。早くここから出よう。火を放つなんて、本気かどうかわからないがとにかく危険だ。一刻も早くこの“悪魔のビル”から出よう」

    ドアを開けエレベーターは使わず、来た時と同じように非常階段で降りた。ビルの中には、さっきまではなかったガソリンの臭いが立ち込めている。

    ―まさか、本気で火を放つつもりか?

    焦りが募る。だが、私も桜子もガソリンの事には触れず、ただ下だけを目指した。

    1階に着きビルの外へ出ると、暗がりの中で不審な動きをする人影が見えた。私と桜子がその人影に近づき声を掛けようとしたとき、桜子が大きな声だした。

    「マミさん?!」

    聞き覚えのある名前に、私は大きく反応した

    ―マミさんて、確か……。

    「あなた、ソムリエのマミさんよね?!」

    ―そうだ、銀座でソムリエをしているあの美人ソムリエだ!

    私はやっと思い出すことができた。この女性は、奥田の計画に協力して失踪したフリをした、あのマミさんだ!

    マミは驚いて歪んだ表情で私たちを見てきた。手にはプラスチック製の大きな容器を持っている。容器のフタは外され、そこからツンと鼻につくガソリンの臭いがする。

    ―まさか、彼女が犯人?!

    マミの右手にはライターが握られている。慌てた様子のマミは、ライターを持つ手を上げ、私たちを脅した。

    「それ以上来ないで!来たら火を放つわよ……!」

    私と桜子は一歩も動く事ができず、彼女の動きを見守る事しかできなかった……。

    すべてが終わった1カ月後


    私はレストランで桜子と一緒にディアブロを飲んでいた。

    「あの悪夢のような出来事から、やっと1カ月が経ったわね」

    桜子は以前とは違う、柔らかな微笑を浮かべて言った。

    「悪夢のような出来事」とはまさにその通りだ。あの日、奥田さんが間一髪のところで駆けつけてくれなければ、私たちはこうして一緒にワインを飲めていなかったかもしれないからだ。

    あの日、マミは全てを話してくれた。

    奥田さんの犯行が解決した後に、再び謎を出してきたのはやはりマミだった。動機は奥田への恋心だ。

    彼女は奥田の事を心から愛していたらしい。だが、奥田が愛しているのは桜子だ。それを知り、桜子への嫉妬を募らせた末での犯行だった。自暴自棄になり、すべてがどうでもよくなっていたようだ。

    だからあの時奥田が駆け付け、マミに謝りながら優しく話しかけると、どうにかマミの気持ちも落ち着いた。

    女性の恋心は、時に炎のように燃え広がる。それは自分と相手を破滅させるほどの勢いを持っているのだろう。

    マミさんも、純粋な恋心がいつの頃からか本人も止められないくらい、おかしな方向へと転がってしまったのだろう。

    私と桜子の関係に、特に大きな変化は起こっていない。今もデートを重ねているが、やはり彼女は雲のように掌で掴むことはできない存在。

    ひとつ確かなのは、彼女はやはりカッシェロ・デル・ディアブロを飲んでいる時は本当に幸せそうな顔を見せるということ。

    今日も、その美しい笑顔を向けてくる。それは以前より少し柔らかさを増したように思っているが、私の胸に秘めている。

    「さあ、ゆっくりワインを飲みましょう」

    あぁ、やはり彼女は謎のままだ。

    (fin)

    ■衣装協力:1ページ目/カーキキャミコンビネゾン¥9,800(マイセルフ アバハウス/マイセルフ アバハウス マークイズみなとみらい店045-681-1830)その他<スタイリスト私物> 3ページ目/オレンジVネックニット¥7,800 ベージュギャザースカート¥9,800(ともにネイ/マイセルフ アバハウス マークイズみなとみらい店045-681-1830)ピアス<スタイリスト私物>

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