美咲は「何言ってるのよー」と笑ったが、口元を押さえる左手の薬指ではダイヤモンドが輝いている。美加が憧れる“ホンモノ”だ。
キラキラと輝くそれは、取り立てて大きなダイヤモンドではないが、逆に相手の男性の誠実さを表しているようにも感じられた。
「私もその輝きが欲しいよぉ……」
呟くと、美咲は笑いながら「大丈夫だよ、美加は」と言うのだった。
「ぜんぜん大丈夫じゃないよ!」
美加がムキになりながら、亮介との今の状況を話すと
「インスタを見る限りでは毎日キラキラ楽しそうなのに、そんなことが起こってたなんてびっくりよ」
と、嫌みでもなく、美咲に正直な感想を言われてしまった。
「そういえばこれも美加のインスタで見たけど、シャンプーってヘアレシピ使ってるんだね?私もヘアレシピのアップルジンジャー使ってるよ。アップルジンジャーって冬限定だからさ、限定ものに弱い私としては、毎年買わずにはいられないんだよね」
「わかる、私も限定もの選んじゃうな。でもアップルジンジャーは知らなかった!次はそっちを買ってみようかな」
「えー、美加が知らなかったなんて意外!」
落ち込んだ時は普段使っているものを変えてリセットするのも、気分を盛り上げる一つの方法だ。美加は早速スマホを手にして、大手ECサイトで商品を探し、購入手続きを進めたのだった。
突然の修羅場!彼が知らない女とデート中?!
亮介とのデートの予定もなく、一人で銀座を歩いていた土曜の昼下がり、美加は信じられない光景を目にした。
美加の視線の先には、亮介が女性と二人で仲良さそうに歩いている姿があったのだ。二人で並んで歩き、女性は満面の笑みを浮かべている。一緒に歩いているのは、美加とは違うタイプの可愛らしい女性だ。
―もう新しい女ができたの?!
―まさか、私と同時進行だったんじゃないの?!
―だったら絶対許せない……!
美加が食事会に行った事を許さなかった亮介が、実は自分はそれ以上のことをしていたのではないか……。
そう考えて頭に血が上った美加は、考えるより先に身体が動いた。二人を目がけて一直線に進み、道を塞ぐように立ちはだかると、亮介と女性は驚き、顔を見合わせた。
さらに女性の方は何かの危険を感じたのか、咄嗟に亮介の袖を掴み彼の後ろに隠れるような仕草を見せた。
それを見て怒りと悲しみに震える美加は、亮介を睨みながら大きく息を吸い込み口を開いた。
「どういうこと?」
低い声で言うと、亮介と女性は気まずい表情で顔を見合せたのだった。
次回12月23日(金)更新
修羅場を迎えた美加と亮介。だが、意外な展開が美加を待っていた……?!