音楽はいつだって、私たちの人生を彩る舞台装置だ。
思い出がフラッシュバックする、懐かしのメロディ。
まるで自分のことを歌っているような、心に突き刺さる歌詞。
誰にだってそんな経験、きっとあるはず。
例えば、普段聞き慣れた音楽たちを元に、東京の恋愛模様のワンシーンを切り取ってみたら...
これはいわば、「読む」音楽。
物語の主人公は、東カレ的なライフスタイルを送る、他ならぬあなた自身かもしれません。
I used to think that we were forever ever…
-永遠だと思っていた、二人の関係-
彼が出て行って、もうじき1ヶ月が経とうとしていた。
思い返せば去年の冬。
私の家の更新のタイミングに、更新料を支払うくらいならと、彼から同棲を持ちかけられた。
そのまま、中目黒の彼の家に転がりこむ形で同棲生活はスタートしたが、結果は大失敗。
あの時更新料さえ払っておけば。
彼との出会いは2年前。
人生で一番「夜の」クラブ活動にいそしんだ夏に、DJとしてプレイしていたのが彼だった。
駆け出しの音楽プロデューサーだった当時の彼は、行きつけだった西麻布のクラブではちょっとした有名人。フロアで初めて話しかけられた時は、からかわれているとしか思えなかった。
「先週も来てたよね、きみの事見てたよ」
「遊び人だと思ってる?」
「・・・俺のこと、好きでしょ」
二人が付き合い始めるまでに、そう時間はかからなかった。
I say I hate you, we break up, you call me “I love you”
-繰り返すけんか、仲直りはいつもあなたのI love youだったね-
当時の彼は、DJとバーテンダーのバイトを掛け持ちしながら、音楽で食べていくという夢に向かってまっすぐだった。
大学を中退して渡米し、独学で音楽を勉強する傍ら人脈を広げていった彼。
同じ年なのに、夢追う彼の姿がまぶしく見えた。
かたや、平凡を地でいく私。
それなりに仕事をして、週末の「クラブ」活動だけが唯一の楽しみだった。
そんな私が彼に選ばれるなんて。
彼の存在そのものが、私を特別に変えてくれた気持ちだった。
3B、という言葉がある。
付き合ってはいけない男性の職業。バーテンダー、美容師、バンドマン。
例のごとく、彼の女癖の悪さも同棲後すぐに発覚した。
あんなに上手くいっていたのに、恋愛が日常になった途端、私たちはけんかと別れ話を繰り返した。
「大嫌い」
「好きだよ」
「別れたい」
「愛してる」
いつだって、彼の「愛してる」が私たちのけんかの終着地点だった。
それなのに...
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