大人の男女に見合う、シャンパンデートとは?
20時ぴったりに店に着くと、恵介さんもちょうど着いたばかりのところだった。グレーのスーツにネイビーのタイをしていて、派手さではなく清潔感で目立っている気がした。
「何飲もうか?」
「喉カラカラだから、ここはやっぱりシャンパンかな」
空気が乾燥してきて、夏とはまた違った喉の乾きを感じるようになっていた。
「OK! じゃあ、とりあえずグラスで飲もうか?」
“とりあえず”の一杯がシャンパンって、凄くうれしい。
「ペリエ ジュエにしようと思うんだけど、どう?」
「うん、私もそう思っていた。この前飲んだ時も美味しかったから」
『ペリエ ジュエ グラン ブリュット』のクラシックでエレガントな佇まいが、飲む前から期待値を高めてくれる。そのわくわく感が普段のご褒美にぴったり。
カウンターにグラスが運ばれてくると、洋なしやグレープフルーツのような香りと絶えず立ちのぼる繊細な泡に、飲むのが待ちきれない。
「乾杯、お疲れさま」
軽くグラスを重ねて、口に含む。
「あ〜、美味しい! 仕事のあとの一杯はたまらないね!」
ほどよくスッキリとしているから、乾いた口内への一杯めにちょうどいい。それに喉越しも優しくて、そして私好みなのが、果実みは感じるんだけど甘すぎないこと。気分も口もリセットしてくれる軽快さもある。
「私、じつはペリエ ジュエってあの花の描かれたベル エポックしか知らなかった」
「ベル エポックが注目されがちだけど、グラン ブリュットも相当優秀だと思うよ。さり気ないからどんなときも似合うし、味は一級品だし」
そんな話の流れで、200年以上の歴史がある造り手ということも初めて知った。とくに薀蓄臭いわけでもなく、「美味しいね」という会話のなかにさらっとそんなネタが入っていた。
「もう一杯飲む?」
「うん、ありがとう」
「ならボトルで頼もうか」
そして、タイミングよくカウンターに食事が運ばれてきた。
前菜のシーザーサラダやホタテの鉄板焼きに引き続きシャンパンを合わせると、アペで飲んだ時とはまた違ったアロマを感じて、新発見。それにいつも自分で飲むときは最初の一杯だけだから、食事に合わせて飲むと、美味しいのに加えお祝いごとのような晴れやかな気持ちになってきた。
「最近ずっと仕事が忙しかったから、今晩はご褒美をもらっている気分」
「そんなに喜んでもらえるなら、今度はうちでの手料理に合わせて買っておくかな」
温泉旅行はもちろん嬉しいけど、東京の日常のなかにシャンパンがあると女性は心が華やぐ。表参道みたいな落ち着いた街なら、飲んだ帰り道に散歩する時間すらドラマみたいに思えてくる。グラス一杯あるだけで大違いだ。
今年のクリスマスも、このシャンパンで乾杯ができたらもう十分に幸せだな…なんて考えながら、食事の合間にもう一度彼と乾杯をした。