「じゃあ先にやろうかな」
加奈子はそう言って、スタッフさんにどこに足をかけてどのホールドを掴めばいいのか教えてもらうと、スイスイと上まで登っていってしまった。
※ホールド:登る時に掴む石のこと
「加奈子上手いなぁ」
元々マラソンが好きで、日ごろから走っている彼女は短時間でメキメキと上達していく。普段は走っている姿しか見ていないので、新たな一面を見れたような気がする。
「お~上手ですね! 次のレベルにすぐ進めそう。」とスタッフさんに勧められ、加奈子は下から8級、7級、6級……とどんどん中級レベルへと挑戦していく。
加奈子は一番上まで到達すると、「登った時の達成感が半端じゃない!」と、下へ下りてきた時には屈託のない笑顔を見せている。5級までは難なくクリア。
格好悪い姿は見せたくないなぁ……と、敦志はジムで日々筋トレをしているので腕力と足腰の力には自信があるつもりだが、傾斜のついた壁となるとかなりの全身運動になることを改めて実感。自分の身体を支えるのも見た目ほど簡単じゃない。敦志は加奈子のペースに合わせて5級に挑戦することに。
「おぉ、すごいすごい♪」と加奈子も下から見守っている。次に掴むホールドを探していると、「もうちょい右上!」などと指示してくれるので、登りきれると自分の達成感もあり、一見個人プレーに見えて、チームワークで登れた感じもして楽しい。
敦志の番が終わると、加奈子はもう1つ上のレベルの4級にトライしてみたいと言う。
「5級から4級に進むと、ホールドも掴みづらいものが出てくるので、ぐんと難易度が高くなりますよ」とスタッフさん。
加奈子は最初は楽々とこなしていたが、途中から傾斜のついた壁で次のホールドに腕を伸ばそうとすると落ちてしまう。
「このレベルになると、さっきと全然違うね。なかなかあのホールドに手が伸ばせない…」と悔しそうだ。
スタッフさんも色々とアドバイスをくれるのだが、コツを掴むのが難しい。加奈子の表情もどんどん真剣になってく……
「ちょっと休憩挟んで、もう一回やってみよ。」と、敦志は一旦気持ちをリセットしようと試みた。
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