代理店女子マリア Vol.8

代理店女子マリア:一般職を見下し、自分のプライドを保つ。キャリア女子の腹の底

広告代理店にはびこる、「チャラい」「遊び人」のイメージ。

広告代理店勤務の正社員女子たちにとって、代理店への先入観はレッテル以外のなにものでもない。

港区の大手広告代理店で、営業として働くマリア、29歳、彼氏なし。

9月を恋愛強化月間と名付けたマリアだが、アベレージ・阿部との恋は発展せず、仮氏のケイへの片思いも破れるという悲惨な結果に。失意の中で「失恋休暇」という名の遅めの夏休みを取り、30を目前に、恋愛だけでなくキャリアの面でも悩みを抱き始めていた。


失恋休暇という名の、遅めの夏休み


久しぶりの平日休み、マリアは昼下がりの代官山を散歩していた。

知らないうちに出来た新しいカフェの数々。前から来たいと思っていたのに、いつの間にかなくなっているお店。東京の街の移り変わりは、まるで過ぎ去る季節のように一瞬で、意識しないとすぐに通りすぎてしまう。

ふいに通りかかった、ウェディングドレスが飾られたショーウィンドウの前で、マリアは昨日のことを思い出し、頭が痛くなった。

西東京出身というコンプレックス


失恋のショックを理由に突発的にとった遅めの夏休み、マリアは久しぶりに「吉祥寺の方」にある実家に顔を出す事にした。

マリアの実家は、西東京最大の都市・立川にある。
学生時代、お食事会で出会った会社員の男性から「吉祥寺より西は東京と呼ばない」と笑われて以来、マリアは立川という街にコンプレックスを抱いていた。今でも実家を聞かれた際には「吉祥寺の方」と言葉を濁すことにしている。

田舎でもなく都会でもない。東京なのに東京と認められない。

この「立川」という中途半端な街が、現在のマリアのプライドや向上心を形成していた。

久しぶりに降り立った立川の街。やはり、嫌いだ。

年を取る親の姿を見たくない、マリアが実家に帰らない理由


実家に戻り、両親と揃って夕食を食べたのだが、話題は専らマリアの結婚話だった。遠回しに探りを入れる母にうんざりする。

「仕事は忙しいみたいだけど、プライベートはどうなの?」

「幼なじみの○○ちゃん、この前結婚したそうよ」

会う度に少しずつ、しかし確実に、おばさんから「おばあちゃん」に近づいていく母親。

鬱陶しさと同じくらいに、なんとかして孫の顔を見せてあげたいという親孝行の気持ちも湧いてきて、傷心中のマリアの心はより締め付けられた。

結局居心地が悪くなり、昨晩は実家に泊まる事なく、早々に都心の一人暮らしの家に戻ってきてしまったのだ。



ウェディングドレスを見て、「いつか私も」と心弾ませていたのは26歳の誕生日まで、ここ最近は、結婚の話題からなるべく目をそむける自分がいる。

やはり、あのメンバーを招集してよかった。マリアはショーウィンドウから目をはずし再び歩き始めた。今晩はキャリア女子たちの集まり、通称「ハイスペック女子会」が開催される。

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