美女ドライブ：小悪魔に振り回されるランボルギーニ男。金曜深夜のドライブの結末は…

25:30＠中目黒。まゆを乗せたドライブの結末は...？

車は西麻布交差点を背に、外苑西通りを抜けて南青山三丁目から表参道へ向かう。時刻は既に24時を回っていた。

都内でこの車を走らせていると、信号待ちの時に隣に止まった車の運転手や、歩行者がこちらに視線を送ってくるのがわかる。まゆのような美女を助手席に乗せている時の、俺のドヤ感はきっと半端じゃないに違いない。

秀樹は、事業拡大の交渉がうまくいきそうなこと、最近行った神楽坂のレストランの話、友達と下田でBBQをしたことをまゆに話した。

「そうなんだあ、え～私も行きたかったな……」

「すご～い！楽しそう」

「ふう～ん」

「へえ……」

次第にまゆの相槌のタイミングがずれ、口数も減ってきたことに気づいた。ちらっと右へ視線をやると、彼女は無防備に助手席に沈み込むようにしてスヤスヤと眠りに落ちていた。

深夜の外苑前通りは車も少ない。目の前に広がる広々とした大通りで、ガヤルドの重低音をビルの合間に響かせながら走るのは爽快だ。

信号が赤に変わったタイミングで、再びまゆの顔に視線を戻す。秀樹は彼女の顔に釘付けになった。

仕事のトラブル続きで疲れが溜まっていた秀樹は、まゆの気持ちよさそうな寝顔を見ると、そのまま家で一緒に横になりたい衝動にも駆られた。


その瞬間、まゆは長い睫毛の瞼をゆっくり開くと、

「あ……ごめん。私、どのくらい寝てた？」

「ほんの数分じゃないかな。いいよ、寝てなよ」

「秀樹君、優しい…ね」



この瞬間、2人だけの空間で自分だけに向けられた笑顔にドキリとする。

秀樹が車を渋谷から恵比寿方面へ進めようとした瞬間、

「ねえ、秀樹くん、わがまま言ってもいい？　今日はもう疲れちゃったから…中目黒まで一緒に来てほしいな」


中目黒には、彼女の自宅がある。もしかして、まゆの家に入れるのか……！？！　秀樹はそんな淡い期待を抱いてしまうのだった。ただ、酔いの回ったまゆを前に、この状況に付け込むのも気が引けた。

まゆといると自分のペースが掴めないのがもどかしい。次には絶対繋げたかった。他の友達から聞くには、彼女には特定の男がいるとか、いないとか。彼女の自宅が近付くと、秀樹は思い切って切り出すことにした。

「まゆちゃん、今度いつゆっくり会える？」

「来週はね、友達と韓国に行くの。帰ってきたら、私から連絡させてね」

具体的な日まで決めたいが、そう言われてしまえば仕方がない。彼女にしつこいと思われるのも嫌だった。

「秀樹君と、もっと一緒に過ごしたいんだよ……でも、もうちょっと待っててくれる？…ね？」



まゆはそう言ってバックミラーで後ろの様子をすかさず確認して車を降りると、口元で小さく手を振りながら、ありがとうと秀樹を送る素振りをした。後ろからは、車が来ている。

まゆは秀樹にもうひと押しさせる猶予も残さず、去って行った――


「もうちょっと待って、か……。」

案の定、その後彼女からの連絡は、暫く既読無視のまま途絶えた。

一瞬、秀樹は大きな魚を釣り損ねた感覚を抱いたが、ランボルギーニに乗る代表取締役という肩書きは強力だ。まゆからの連絡を指をくわえて待っているような男ではない。


翌週には、秀樹はまゆ以外の女の子を助手席に乗せていた。そう、金曜の夜にデートを約束していたサトミだ。

そんなことは露とも知らず、まゆが思い出したように秀樹に連絡をしてきた時には、ガヤルド・スパイダーの助手席は既にサトミの特等席になっていた。

女子はSNSを駆使して、あらゆる情報を手に入れるものだ――まゆは、秀樹のLINEのタイムラインに「いいね」ボタンを押すサトミの存在に薄々気づいていた。

彼氏の車を、自分の所有物のごとくカバー写真に設定する子も少なくない。サトミのカバー写真が秀樹の車の写真に変わったことに気づくと、まゆは何かを察して秀樹の様子を探ってくるのだった。

小悪魔まゆの駆け引きに惑わされることなく、秀樹はガヤルド・スパイダーも恋愛のステアリングも、がっつり掴んで離さない男のようだ。

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次週9月11日日曜更新予定
ドアを開ける時に女子がたじろぐBMW i8、登場。

[取材協力] Car In Lifestyle
都内の20代後半～30代の高級車オーナー7名で結成したチーム。高級車のある極上なライフスタイルを追究し、定期的にツーリングに出掛けている。

＜モデル：小川ももえ＞
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