ハードボイルな重低音響かせ、ガヤルドスパイダーも秀樹の心拍数も急加速
久しぶりに彼女に会えた嬉しさで有頂天になり、行き先を決めないまま秀樹はランボルギーニ・ガヤルドスパイダーのアクセルを踏んでいた。
この時間から行くとしても、行くところは限られてる……いや、そんなのは愚問というものだろうか……
「…ねえ、オープンカーにして冷房つけてると、走ってる時ちょっと寒い……」
アルコールで酔いが回っているのか、少し目が赤く潤んでいるまゆにじっと見つめられると、思考が一瞬停止して運転どころではなくなりそうだ。
「ああ、ごめん。冷房切っていいよ。車の屋根戻してもいいし」
オープンカーで風を切って走るには、なまぬるい晩夏の夜はちょうどいい温度感だった。
「ううん、大丈夫。身体が冷えちゃうかなって思っただけ……ねえ、秀樹君の車って本当にかっこいいね。ちょっとだけドライブしたいな」
俺が会いたい時には会えないくせに、会った途端に甘えてくる。猫がじゃれてくるかのように、秀樹はまゆから甘えるような声でお願いされると、どうしたって強くは出られなかった。
“俺は、まゆには弱いな……”
「ずっと会えてなくてごめんね…。会いたかったんだけど、最近撮影のお仕事が重なって、体調崩しちゃってて。忘れてなんかいないよ♡」
デート3回目の法則なんてものもあるが、秀樹はどうにか彼女に振りむいてもらいたかった。付き合いたいという言葉はもっとお上品な言い方で、他の男には取られたくない、という独占欲に近いだろうか。彼女にがっついてるとも思われたくないが、どうにか距離を縮めたい…
「秀樹くん、最近お仕事はどう? 10月から新しいビジネスを始めるとか…言ってなかったっけ」
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