恋愛低体温女子 written by 内埜さくら Vol.5

恋愛低体温女子:腹黒なライバル女に妨害される淡い恋心と、ある人からの意外な告白!?

前回までのあらすじ

「コミュニケーション能力に長けた恋愛上手のほうが恋愛下手より仕事ができる可能性が高い」

この説を全否定する神崎真理子(29)は自身が憧れだったブランド『M classe』で働く新人プレス。そして彼女は自ら積極的に人を好きになった経験に乏しい、自他共に認める“恋愛低体温女子”でもあった。

上司である二階堂隼人(35)からは毎日叱られながらも、忙しい日々を送っている。だが真理子はひょんなことから同じ会社でパタンナーをしている一ノ瀬大知(29)へ好意を持つように。

そんな中、同じプレス職で友達でもある長倉怜奈(29)に誘われた食事会で偶然、一ノ瀬と遭遇。だが肉食女子の竹下みちる(27)が一ノ瀬に猛アプローチを仕掛け、真理子は意気消沈するが……。

前回vol.4:先手を取れる者が恋愛市場の勝者なのか。肉食女子VS草食女子のお食事会バトル勃発!?

先週金曜日の食事会で出会った一ノ瀬大知に、竹下みちるは押しすぎず引きすぎずのバランスを取りながらアプローチを続けていた。

日曜日のランチは断られたが、まだ挫ける段階ではない。

――きっと、ああいう男が結婚したらいい夫、いい父親になるのよ。

食事会で一ノ瀬さんは、休日は料理をするのが愉しみだと言ってたっけ。料理が趣味なんて、女の強い味方じゃない。それに、身長は高いけど顔が整いすぎていないのもいい。悪い虫が寄りつきづらいイメージ。

穏やかな話し方と、メンバーの誰かが孤立しないように気遣う姿も好印象だった。あの人柄なら結婚したら、料理だけじゃなく掃除や洗濯、子育てまで一緒にしてくれる夫に調教できるかも。

この一ノ瀬への感情を恋かと聞かれたら、違うかもしれない。だがみちるは、恋をして結婚するのが人生のマストとは考えていない。一ノ瀬との結婚を妄想すると同時にみちるは、過去の男達を思い返す。実は交際人数は相当な数に上るが、もちろん社内の人間には伏せている。

社名を聞けば誰もが耳にしたことがあるような商社や広告代理店に出版社。下請けではないTV局勤務。医師に弁護士に自営業。彼らはつき合って数ヶ月経つと必ず、冗談交じりに聞いた。「もしかしてみちるって、俺の職業に惚れてない?」

しかし当然、「はい、そうです」などと答えはしない。女は誰でも女優と言われているが、そう聞かれるとみちるは決まって薄く涙を浮かべ、持ち前の演技力を発揮したものだ。

「ひどい……。わたし、あなたがもしいまの仕事を辞めざるを得ない状況になったら、代わりに働く覚悟があるほど愛してるのに」

嘘だった。裕福とは呼べない家庭に育ったみちるは、偽セレブと陰口を叩かれてもいいから、夫の職業と地位というふんどしで相撲を取る専業主婦に強い羨望を抱いていた。

だが、自分の夢を叶えてくれる男達とつき合って気づいた。夢は実現するかもしれないけど、心が貧相な結婚生活になる。裕福で誠実な男と出会う運がなかっただけかもしれないが、彼らはみな、関係が深まるとなぜか自分に高圧的になるのだった。だから、30歳までに結婚したいみちるは、矛先を変えた。

――わたしが専業主婦になれるくらいの稼ぎで、わたしを大切にしてくれて、わたしだけに愛情を注いでくれる人でいい。

だが、自分が深い愛情を注ぐことを考えていないため、これがいかに自分勝手な願いであるかに、みちるは気づかない。その矛先を変えた時、現れたのが一ノ瀬だったのである。だからこそみちるは挫けずに火曜日、また一ノ瀬にLINEした。

「今週、どこかお時間いただけないでしょうか。実は仕事で自分では判断できかねる問題が発生しまして、いろいろな方にご意見を伺っています。一ノ瀬さんにもぜひ、お伺いしたいのです」

すると、ほどなくして返事がきた。「そういうことなら、僕で協力できることなら喜んで」

今週金曜日に会うことがトントン拍子に決まり、心の中でみちるはガッツポーズをしつつ返信をする。

「ありがとうございます!ではお店を決めたらまた連絡しますね」

一ノ瀬とのLINEを終えると、みちるはマリコの顔が浮かんだ。

――そういえば一ノ瀬さん、食事会の時マリコさんと話したがってたし、マリコさんもまんざらでもなかった。牽制しておかなくちゃ。そして、怜奈と真理子3人のグループLINEにメッセージを送る。

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