商社マン優作 Vol.3

商社マン優作:憧れの駐在ライフの実情は?独身と世帯持ちの大きな差を知る海外赴任28歳

ー総合商社に入れば、人生、一生安泰で勝ち組。ー

東京において、商社マンというのは一見、社会的ステータスの高い、万能なカードに見える。

しかし、果たしてそれは事実なのか?

商社という舞台には、外部からは計り知れない様々な人間模様があり、出世レースに関する嫉妬と憎悪に満ちた縦社会のプライド合戦も繰り広げられている。

早稲田大学商学部卒業後、大手総合商社に入社した優作。彼の商社マン人生は、薔薇色なのか、それとも?


花形部署に任命され、無敵だと信じていた24歳。仕事に乗ってきた矢先、異例の部署変え人事で食品部に移動になった27歳。落ち込んでいた矢先、優作の代わりにエメルギー部に配属されたのはまさかの賢治だった...


海外赴任のその先に


ブォンブォンというけたたましい音と共に、 ガソリンの煙が充満する街を一人、汗だくになりながら歩く。

赴任先は、フィリピンのマニラだった。

「バナナ君、頑張ってバナナ王子になってこいよ。」

同僚に見守れながら日本を発ち、今日で約3ヶ月目になる。出発の日、成田空港まで見送ってくれた同僚の顔ぶれの中に賢治はいなかった。

「出張が入っちゃって。ごめんな、優作」

それが賢治との最後のやり取りだった。今から考えると、食品部にいた賢治と、エネルギー部にいた俺がトレードされたような形だった。フィリピンに着いた今も、何故そうなったのか理解できずにいる。

異例過ぎる部署の異動は、社内でかなり話題になっていたようだ。栄転とは決して言えない、どちらかと言うと左遷での噂。逆にフィリピンに来れてよかったと思っている。逃げかもしれないが、皆から同情と哀れみの目で見られるのに耐えきれなかった。

何より、麻里子が俺を見る目が何かを訴えているような、小動物を見つめるような悲しい視線が辛かった。

「優作さん、大丈夫ですか?」

そんな視線を向ける麻里子を直視することすらできず、姿を見る度に心が張り裂けそうだった。


「Are you ok?(大丈夫ですか?)」

街行く人に話しかけれ、はっとする。麻里子や異動のことを思い出し、思わずマニラの市街地で呆然と立ち尽くしていた。

最近マニラは発展が著しく、次々と新しい建物が出来ている。日々変わっていく町並みはダイナミックで、南国ならではの灼熱の太陽とアジアらしい湿気が混じり何とも言えない空気を醸し出している。

最初の1ヶ月目は何で俺なんだ、と毎日思っていた。しかし今はこの状況を楽しむしかないと考え方を変えた。日本の本社に残り、哀れな視線を集めるよりも、マニラで埃にまみれながらこの国の発展に尽力している方が100倍マシだ。

「yeah, thank you.」

フィリピンは人が優しい。その優しさに既に何度も心が救われた。

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