代理店女子マリア Vol.3

代理店女子マリア:ミスチル好きは没個性?!独特な価値観が、婚期を遠のかせる

広告代理店にはびこる、「チャラい」「遊び人」のイメージ。

広告代理店勤務の正社員女子たちにとって、代理店への先入観はレッテル以外のなにものでもない。

港区の大手広告代理店で、営業として働くマリア、29歳、彼氏なし。

メディア部の先輩からやっかいな仕事を頼まれ、相変わらず忙しい日々を送る。仮氏のケイとは1ヶ月以上連絡が途絶え、関係性は絶望的だった。20代最後、本命の彼氏を作ろうと、密かに婚活アプリを始め新しい出会いを求め始めていた。

信じられるのは自分だけ。代理店女子は、辛い。


六本木の高層オフィスビル。
クライアントのロビーに立つマリアは、いささか憂鬱な気持ちだった。

メディア部の藤森に頼まれたアーティストのコンサート協賛提案のため、クライアントにアポを取ったのである。

今日のメンバーは、営業のマリアと柳沢、それに藤森と、プロモーションの後輩・篠原の4名。なんとか提案できるまでに話を詰めたが、クライアントの反応が怖い。


「…投資価値が全く分からないですね。うちがこの話に乗ると思いました?」


クライアントからの反応は想像通り、痛いところを淡々と突かれた。

だが、ここで引き下がる代理店女子ではない。クライアントの意向をあらゆる角度から引き出し、「条件は変えず、協賛金を安く仕切れれば検討の余地あり」というところまでは最終的に持っていた。



クライアントのオフィスを出るや否や、「まあ何とかなるっしょ。」と藤森は相変わらずお気楽な調子、次の打ち合わせがあると言いながら足早に姿を消した。

いやいや、お前が頼んだ案件だろうと、思わず突っ込みを入れたくなる。

婚活アプリが引き寄せた偶然。マリア、良縁ゲットなるか。


マリアたちは、遅めのランチを取るために六本木の『マーサーブランチ』へ。募る藤森への不満を和らげるには、糖分の摂取が一番と、マリアはすかさずフレンチトーストを注文した。


食事を待つ間、テーブルに置いたマリアのスマホに通知が現れた。

婚活アプリのマッチングの知らせだ。先日の代理店女子会で先輩から勧められこっそり始めていたのだが、通知をオフにするのをすっかり忘れていた。

甲高い声で、すかさず突っ込みを入れる篠原。恥ずかしい、恥ずかしすぎる。

柳沢にも視線を向けると、何やらにやにやと企んだ笑みを浮かべ、おもむろにスマホでFacebookを物色し始めていた。

「そんなに必死なら、俺が紹介してやるよ。32歳、独身。俺が知りうる最優良物件だ」

柳沢はFacebookのプロフィール画面をマリアに差し出すと、すかさずこう加えた。

「そのかわり…俺の送別会は盛大に頼むぞ」

ベンチャー企業への転職が内定していた柳沢は、正式に会社にも退職願を提出し、退社を2ヶ月後に控えていた。

いい男の紹介と引き換えに、部を上げての大送別会の幹事、か。セコい男だと飽きれながらも、背に腹は代えられない。

ただでさえ忙しいのに、また面倒なことを引き受けてしまった。

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