サトコの言う、イマドキ男子の魅力
「10歳下ってどんな感じ?話とか合うの?」
ツッコミ所満載すぎて、つい間抜けなことを聞いてしまう。
「ぜんっぜん。でも、とりあえず褒めてくれるし、かわいいし、気分良いよ。イマドキ男子ってあんまり年齢とか収入の差は気にならないみたい。張り合うこともないから、お互いラクで楽しいよ。エレナも年下いきなよ!」
「うーん、私、年下って慣れてないから…」
「なに女子高生みたいなこと言ってんの。いくら童顔でも29なんだからさ。ちょっと男の幅広げたほうが良いよ。モタモタしてると一条に食われるよ」
「一条先生はそういうんじゃないって。…でもたしかに、若干、人生飽きてきたんだよねぇ。仕事も好きだし生活に満足はしてるけど、あと50年同じ生活が続くと思うと、気が遠くなる」
「でしょ?まずは男の新規開拓からだよ。エレナは身近な男とばかり関係を持ってきたし、大学病院辞めてからたいして出会いもないでしょ?
あ!ちょうどよかった。周りに、悩んでる男がけっこういるのよ。ほら、東京にいると、男もけっこう大変そうじゃない?
みんないい男だからさ、デートがてら相談にのってやってよ。精神科医の、エレナせーんせ❤️」
「えー。私薬物療法しかしないから…」
「もーぐだぐだいわないで!ついでに私に振られて面倒くさくなってる男、なんとかして!」
あいかわらずイノシシのような勢いの女だ。そんなところが、好きなのだけれど。
一条、37歳。東京都出身。職業、精神科医。
「先生聞いてくださいよ!あのサトコが結婚ですって」
白金に今年新しくオープンした『一条メンタルクリニック』の休憩室。午後の外来を終えた一条が入ってくるなり、エレナは興奮気味に言った。
日当たりが良く、計算されつくした色とりどりの椅子が並ぶこのクリニックは、まるでエステサロンのようだ。
「…...そういうわけで、なんだかわからないけど、要は、サトコのしりぬぐいと暇つぶしに付き合わされそうなんです。うまく断れないかなぁ」
「それは良い機会だな」
「え?」
「今お前が勤めてるのはメンタルクリニックだ。去年までいた大学の精神科とは違う。頭が良いだけじゃダメ、カジュアルなお悩み相談だって聞いてやる度量が必要なんだ。
ここは当直もないし、夜暇だろう?院長命令だ、行ってこい。…もちろん、上司である俺に『報告、連絡、相談』も忘れずにな」
絶対面白がってるだけじゃないですかぁ、とエレナが頭を抱えていると、早速サトコからLINEが届く。
「例の件、来週の水曜どう?『ラ・ベル・エポック』予約したって」
―ふうん―
エレナ先生の「東京砂漠の回診」が、これから始まる。
◆
次回8月3日(水):証券会社に勤める34歳の「崇成」の闇とは?
『ザ・ロビー』
ペニンシュラ東京1階、エントランスの面前に広がるメインラウンジ。明るく開放的な空間で、シャンデリアや存在感あるアートを眺めながらゆっくりとした時間を過ごすことができる。ブレックファスト、ランチ、アフタヌーンティー、ディナー、カクテルタイムと、それぞれの時間帯で違った表情を持つのも魅力。
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