選んだのは、10歳年下、“俳優の卵”
「どれにしたの?マセラティの彼?ミッドタウンレジデンスのバツイチ?」
「いや新キャラ。22歳、俳優の卵。ヒモにするわ」
「は?」
サトコはサンドイッチを口に放り込んであっという間に飲み込み、饒舌に話しはじめた。
「ほら、あたし32になったじゃん。それでね、あ、やっぱり結婚してみようかなって思ったの」
「ごめん、もう今すでに、ついていけてない」
「まあ聞いて。で、サトコセンセイは考えたわけ。どうせなら子供ほしい。でも、自分よりバカな男が外で仕事してる間、自分は家で子育てだけしてキャリアがストップ。こんなのシャクでしょ?」
「子育てに、シャクもなにもないんじゃ…....」
サトコは案外、仕事にはストイックだ。
「もちろん最初は、自分より稼ぎの良い優秀な男と結婚って思ったよ。でもそういう男って古風だから、『あなたがいないと生きていけない』っていう、なーんの取り柄もない女が好きなのよ。こっちだってそんな扱いにくい男、願い下げよ!」
きっと、『稼ぎの良い優秀な男』と一悶着あったのだろう。
「そこでコペルニクス的転回よ。半端な男は論外。自分より上もダメ。じゃあ、かわいい年下クンと結婚して、家のこともやってもらえば良いじゃんって」
そう…なのか?
「で、pairsで若くて素直な男みつけて、ササっと仕込んで、いま妊娠2ヶ月ってわけ。
あ、もとのインスタはさすがに彼にみられたら気まずいから封印した。ママキャラで新しいインスタ始めたからよろしくー」
“新しいインスタ”にあげるためだろう、真剣な表情でアフターヌーンティーセットの写真を撮りはじめたサトコを、エレナはあっけにとられて見ていた。
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