お酒の履歴書：乾杯から始まる恋物語〜意識高い系婚活OL 明子の場合〜

「あの、青山一丁目まで歩きませんか？」

終電で帰ることになったんだけど、酔いざましに一緒に散歩をしたくなってそう申し出た。

外苑東通りではたくさんの酔っぱらいとすれ違って、いつもならそういうのが嫌なんだけど、この日は自分も仲間になった気がした。ヒールだったけど足取りも軽やかになって、青山一丁目まであっという間についてしまった。

「今日はありがとうございました！ お酒もお肉も美味しかった〜！」
「電車の中で寝ないように気をつけてね」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、また今度ごはん食べようね」

今度がいつかが早めに知りたくて、私は3日後に土曜昼間の約束をとりつけた。そして、ランチをしたり映画を観る昼間のデートを2週連続で楽しんだ。

映画を観た日の夕方には『ビストロ ボラチョ』というお店で、この前覚えたチンザノ アスティで一杯だけ乾杯して別れた。お昼から会って、3〜4時間後に解散。はじめのうち、デートは8分目にするのが私の戦法だ。ちょっと足りないくらいがちょうどいい。そうして、もっと知りたいと思わせたい。

それが効いたのか、3回めのデート以降、西野さんと頻繁にLINEを交わすようになった。ランチに何を食べただとか、なんてことない内容だ。既読したらすぐに返事はして、時々は自分の写真を送る。

この前メイクを完璧にして送ったのは、いわゆる“ニアチューポーズ”。ストローで飲み物を飲んでいる最中のポーズで、キスの時の顔を連想させるから“near chu”と呼ばれてるやつ。これだと自然と上目遣いになるし、唇も強調されてさり気なくセクシーに見える。30枚くらい撮って厳選の一枚を送った。

次は夜のデートかな…と考えながら、この前西野さんと行ったお店『ビストロ ボラチョ』でまたLINEをする。チンザノ アスティも頼んで、グラス片手の自撮り写真も送った。

カウンターに座っているもうひとりの女性も、チンザノ アスティを飲んでいる。美人だけど、年齢は33歳くらいかな。どうしよう、私もあの歳まで独身だったら…と、独身と決めつけちゃったけどたぶん当たってる。その様子を見てたら、「早く西野さんと次のデートの約束しなきゃ！」と焦ってきた。

“西野さん、土曜の夜で空いている日はありますか？”

と、まずはブッキング。次のデートは、ボディラインがきれいに見えるあのワンピースを着ていこうと考えながら、グラスのなかのチンザノを飲み干した。

vol.03　モテ期到来（？）代理店マン、西野の場合
西野 純（広告代理店勤務・33歳）
飲みレベル　★★★★

会社で残業中、最近デートをしている明子ちゃんからLINEが入った。前にふたりで行った店でひとり飲みしているらしくて驚いた。つい最近まで、お酒を飲まない子だったのに、成長著しい。

そのあと、土曜の夜のデートに誘われた。大人しそうに見えて、意外や積極的。LINEの頻度も増えてきてつき合うモードになってきたけど、正直、いまはもう少し様子をみたい。

もやもやしているのは、同期の美佳のことがあるからだと思う。残業が終わって23時。もしかしてまだ飲んでるかな…。そう思って、美佳に電話をかけてみた。

（第2話・終）

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