意外に気になる男のファッション。ありがちなNGアイテムとは?
せっかく髪が綺麗に巻けたので、タクシーを捕まえて広尾へ向かうことにした。
姉の家は半蔵門の住宅街にある。横浜の実家に戻るよりはずっと便利だから、ついつい予定の合間に姉の家に入り浸ってしまう。
今日の目的地である『分とく山』に着くと、通されたカウンターの端の席にはもう洋介が座っていた。IT系ベンチャー企業の社長で、35歳独身。お金は結構あるらしいと紹介してくれた友達が言っていた。
前回の食事会でも思っていたけど、やっぱりとある芸人にそっくり。クリーム色のパンツに、白いシャツ、そして恐らく彼的おしゃれポイントであるネイビーのベスト。
おしゃれ好きな男はベストを好む傾向がある。そんなアイテムが似合うためには相当のセンスとスタイルの良さが必要だという事を、彼らは知らない。ベストが好きな女なんて、誰も口に出せないだけで絶対にいないと断言できる。
可愛いなぁ、本当にタイプなんだよね、と、洋介は私を頭から足の先までねっとりと見回して何度も言った。勿論外見を褒められるのが嫌いなわけじゃないけれど、外見に食いつき過ぎる男にも好感が持てない。女心は思っているより難しいのだ。
奢られる食事なら、つまらなくても修行と思え……?
「ここはお任せのコースだよ。でも和食の良さは、美鈴ちゃんは若いし分からないかなぁ。今は何を食べても美味しい時期だよね。」
褒められたのかディスられたのかよく分からないが、彼は椅子に踏ん反り返って和食のうんちくを語りだした。出汁がどうだとか、季節の食材がどうだとか。季節にちなんだ食材には、日本の文化とも精通している云々、なんちゃらかんちゃら。
話はどんどん小難しくなってきた。私は美味しい前菜をつつきながら、既に少しうんざりしてしまう。洋介は、相手のテンションも考えずにペラペラと語りまくるタイプの男だと判明した。社長系の男にこの手のタイプは多い。
「俺、小栗旬に似てるってよく言われるんだよね。」
難しい話に適当に相槌を打っていたら、突然ジャブを食らった。思わず洋介の顔を見ると、やはりあの芸人にそっくりな顔で、澄まして唇をすぼめている。イケメンが好きというわけではないが、勘違いはもちろん御免だ。
以前テレビで「人の金で飲むときは仕事だと思え」ということを言っていたのを思い出した。奢ってもらうならばそれは仕事であり、つまらなくても修行だと思う、それが最低限のマナーであると。
「確かに、大きく括ったら同じ系統ですよね~。」少しでも男が満足するように、無理矢理笑顔を作った。
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