2016.05.10
僕のヤバい時計 Vol.2時計1つとってみても、物に対するこだわりは、選ぶデザイン、ブランド、値段、買い方などに顕著に表れるものだ。そして、破格の高級時計をコレクションにする者がいる一方、敢えて1つの時計にこだわる者もいる。
ヤバいシリーズ、高級時計編の第二弾。某外資系証券マンI氏にご登場いただくことにしよう。
JR有楽町駅から徒歩5分ほど銀座方面へ歩き、東急プラザの裏路地に入って真っ直ぐ歩いていくと、左側に「五明」と書かれた白い暖簾が低い門戸に掛けられており、一見してそこがレストランだとは思いもしないだろう。
階段を降りていくと、地下に広がる空間は漆塗りの壁で隔てられ、まるで古都の格式高い高級料亭にでも迷い込んだかのような錯覚に陥る。
支配人に案内されて店内の奥へ進んでいくと、煌々と照らされたカウンターが視界の前に広がり、バカラのグラスでさえ添え物に見えてしまうほど、荘厳華麗な空間がそこにはあった。その真ん中に男は腰を下ろした。彼の左手首には、ロレックス デイトナブラック。
Y.I氏 32歳
「結局自分は、自分が情熱を傾けたものを最後までやり切れなかった人間なんだ、と思っています」静かな語り口で、口を開いた。
金融業界に身を置いて、約10年。ニューヨークで生まれ育ち、就職を機に21歳の時に来日。某米系証券会社に5年ほど勤務した後、欧州系証券会社に転職し、ヴァイス・プレジデントの地位にまで上り詰めた。
元々経済やマーケットについて学ぶのは好きだった。全米トップクラスの富豪が住むと言われるウェストチェスターで、父が営んでいた日本食料理店でウェイターをしている時、常連の証券マンに金融業界への就職を勧められたのがきっかけだったという。
傍から見れば、輝かしい経歴であることは間違いない。
「僕は、やりたい仕事ではなく、出来る仕事をすることにしただけですよ。」と、諦めとも捉えられかねない語り口で、趣味へのこだわりを話し始めた。
そのエリート風な風貌からは想像し難いが、幼少期に旅先で出会った人物に手品を見せてもらったことから、手品の世界にはまっていったという。得意先との会食では、今やプロ顔負けの手品を披露することも。いつでもマジックバーで働ける自信はあります、と余裕顔。
「パフォーマーの単なる自己満足なのか、本当に相手を楽しませようとしているのか、パフォーマーの姿勢は気になります。手品をしていると、観客の中には必ず『トリックが分かった!』 と言う人がいるんですよ。その人を喜ばせる為に、わざと失敗してみせられることも、プロの腕の見せどころ」と、昼は証券マン、夜はマジシャンと2つの顔が垣間見えた瞬間だった。
この男には、何かセオリーがある。それを嗅ぎ取った我々は、彼にある疑問を投げかけた。
―I氏には、人生で大事にしている美学のようなものってありますか?
「そうですね……(沈黙)『これさえあれば』、『これさえすれば』というものは、大体がっかりするものだと思っています」
―えっと、欲しいものが手に入っても、がっかりするとはどういうことでしょう……
「欲しいものを得るまでに努力する、そのプロセスに幸せを感じられなければ、いつまでも幸福にはなれないってことです。この業界で10年働き、大体欲しい物は手にしてきましたし、手に入れられます。(愛車はアストンマーティン V8 ヴァンテージだとか)
でも、入社した時から今のほうが幸せかっていったらそうではないんですよ。年収が2倍になったからといって、幸福感が2倍になるわけではない……」
物欲を満たすサイクルから抜け出そうとしている中、時計の持ち方に対するこだわりもあるようだ。
「持つべき時計は、21歳の時に買ったこのロレックス デイトナブラックだけでいいと思っています。きりがないですからね」
【僕のヤバい時計】の記事一覧
おすすめ記事
2016.05.03
僕のヤバい時計 Vol.1
僕のヤバい時計:馬の靴屋は想定外に儲けている…高級腕時計5本、29歳イケメン御曹司
2016.05.22
インスタグラマー50の秘密
恋人ですか?好きな人はいます(笑)好きなお店から推し量る、インスタグラマーの恋愛事情
2019.09.11
東京ワーママ戦線
「キャリアは諦めた方がいい?」悩める31歳ワーママに、先輩ママが告げたリアルな思い
2016.06.05
東京ネイティブ
東京ネイティブ物語:芸人・品川祐の場合〜大阪には憧れるが、小田急沿線から離れられない〜
- PR
2023.05.26
結婚を意識する3年目のふたりの、艶やかな6月の過ごし方
- PR
2023.05.24
女性から支持されるブランドのメンズバッグこそ、艶やかなディナーの頼もしき相棒だ!
2016.01.29
花より高級車
東京を味わい尽くしたマセラティ君、世界の大海を知らず
2023.01.12
ポン女
「彼のこと好きになれたら、幸せになれるのに…」ドキドキする相手としか付き合えない女の運命は…
2019.07.30
港区モード
東京男の品格:29歳目前。未婚でいることを不安に思う女を癒した、男の行動とは
2023.03.29
ソラノシタ〜成田空港物語〜
勤続5年目、ベテランCAの「黒歴史」。お客様とグラホを巻き込んで、ゲートでいきり立ったワケ
東京カレンダーショッピング
ロングヒット記事
2023.04.26
【ご報告】
ヒモ同然だった元カレが、司法試験に合格。生まれ変わった彼から差し出された、封筒の中身は…
2023.05.05
甘いひとくち〜凛子のスイーツ探訪記〜
「ちょっと休んでくるね…」休日デートの途中、31歳女が涙をこらえて彼氏から逃げたワケ
2023.04.23
男と女の答えあわせ【A】
女性の家で目を覚ました瞬間に、慌てて帰った男。部屋でうっかり見えてしまったモノに驚愕し…
2023.05.14
ハワイに憧れて
離婚して10年経っても、元妻に会い続ける男。不審に思った現妻が、夫を問いただすと…
2023.04.22
男と女の答えあわせ【Q】
3度目のデートでキス。「付き合おう」と言って家まで来たのに、翌朝に男が慌てて帰った理由
2023.04.28
スモールワールド~上流階級の社会~
「花嫁は彼のこと、好きじゃなさそう」結婚式に出席した無邪気な女子が、そう思った理由とは…
2023.05.09
二世お受験物語
名門校卒だと知られた途端、教室のママ友たちの「見る目」が変わり…。“二世受験”の苦悩
2023.05.16
AM9時、六本木のカフェで
カフェで堂々と別れ話をするカップルに遭遇。思わず聞き耳を立てた女が、恥ずかしさに頬を赤らめたワケ
2023.04.27
許さない女、許す男
離婚から1年。男が初めて別れを後悔した、元妻からのLINEの中身とは?
2023.05.04
嘘
嘘:計画通り“医者”を捕まえた32歳女。しかし婚約直後、知りたくなかった彼の本性に触れ…
この記事へのコメント