東京いい街、やれる部屋2 Vol.1

東京いい街、やれる部屋2:そうだ、まずは男の部屋に行こう

「恋愛に対していまいち本気になれない」

出版社の広告部で営業事務として働く彩乃(27)。前職は商社にいた彩乃は事務経験は長かったものの、いわゆる”業界系”の世界は初めて。雑誌の生命線と言われる広告部で、営業をサポートする日々に仕事の楽しさを感じていた。

仕事は充実しているが、年齢的には結婚適齢期。フェイスブックを見れば結婚、出産ラッシュで焦り始めなければいけない。しかし、いまいち結婚にピンと来ない彩乃にとって、もはや付き合うってなんなのだろう……という疑問にまで陥っていたのだ。


「それはヤバイ! 一番の売れ時に結婚はおいておいても、恋愛に興味ないってなに!?」

同じ会社の編集部で働く真美から激励が飛ぶ。同期ではないが年齢が近いこともあり、彩乃が中途採用のときには仕事、社内の人間関係など今の会社で生き抜く術を教わった。今では彩乃のことをよく知る友人でもあり、仕事中はお互いを励まし合う戦友。今日も校了を終え、久しぶりに飲みに行こうと『観音坂 鳥幸』に足を運んでいた。

ワイン好きな二人にとって品揃えのよさが気に入っており、「ここにデートに連れて来られたら私のことわかってると思っちゃう!」なんて、よく妄想に花を咲かせていた。

しかし今年の秋に真美は結婚をすることが決まり、こうして独身人生を楽しめるのも今だけなのである。彩乃を心配する真美はそろそろ彼氏の一人くらい作れば? と軽く聞いてみたところ、「恋愛に興味が持てない」というまさかの回答につい熱が入ってしまったのだ。


ちょっとでもいいと思ったら、まずは部屋に行ってみれば?


そんな突拍子もない真美の提案に苦笑いを浮かべる彩乃。それって簡単に言うと寝ろってこと? と聞き返せば、「最終的にはそうなってもいいと思う」なんて、他人事。真美がそんな話をした理由には彼女の大学時代の友人が絡んでくる。

友人はデートした男たちのライフスタイルを研究している子だと真美は話す。その子が言うにはいくらデートしても男性の部屋まで見ないと相手の性格とかクセはわからない。

中学生じゃあるまいし、最終的な判断は自分ですればいいのだから、少しでもいいなと思ったら部屋を見ることにしているという。実際に見た目だけでいいなと思った男性が、かなりの神経質であることを見破れたり、既婚者の別宅に行ったら現実が見え、そういうことをせずに済んだなど、自分にとってはプラスになることばかりだったそうだ。

「彩乃、この間西麻布で知り合った男の子がタイプだったって言ってたじゃん。デートしても乗り気になれないなら、一回お家訪問してみなよ。誘われてたんでしょ?」

彩乃は一ヶ月前くらいにと友人と西麻布へ繰り出し、真美の言う”義実”と出会ったのだ。仕事帰りで先輩に連れてこられたという義実は、目鼻立ちがはっきりしていて、遊び慣れているというよりは好青年な印象だった。某芸人に似ており、彩乃にとってはかなりの高得点。その日は連絡先だけを交換し、日を改めてご飯に行こうという話になった。

武蔵小山に住んでいる彩乃と目黒に住んでいる義実は家が近いことから、お互いの最寄り駅で交互に会うようになり、仕事のことや住まいあるあるで盛り上がっていた。家の話になったときに義実は、「実は俺んち、風呂とトイレ透けてるんだ(笑)」などと、思わず聞き返してしまいたくなる話をし始め、その日はそれだけで盛り上がったのを彩乃は思い出す。

本当にそういう部屋あるんだね、見てみたいと冗談交じりで言ったときに「じゃあ今度見に来る?」とは言われたが、それは本気なのかわからない。友達止まりの関係を進めるいいチャンスだとは思うが、自分から部屋に行きたいとはいいにくい。そんな彩乃に対し、真美はひとつの提案をした。

「じゃあ今から連絡して恵比寿で飲んでるんだ、って言ってみなよ。時間も23時だし、会おうって言われたら会えばいいじゃん。その代わり会うのは目黒にしてね!」

お酒も進んでそこそこ酔いが回っていた彩乃は、この勢いならと義実に連絡をとった。

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