東京いい街、やれる部屋 Vol.5

商社マン自慢の麻布十番のタワーマンション。生活臭が残念な一方、実は...

前回までのあらすじ

デートした男たちのライフスタイル研究が趣味の、保険会社営業職の奈々(28歳)。この連載では、過去に奈々が遊んだ様々な男性が選んだ街と部屋について、語らっていく。

今までに麻布台在住戦略コンサルタントや、京大卒のファッションセンスに難のある医者東銀座在住CMプランナー大人の魅力溢れる40代の男の部屋への訪問を思い返してきた。

28歳になった奈々が訪問するのは、年下の商社マンの部屋だが...?


気づけば奈々は28歳になっていた。もうれっきとした大人の年齢だ。周囲の結婚の話もしょっちゅう耳に入るようになり、「結婚」という課題はもはや無視することはできないステージに入っている。

しかし、大学時代から東京の男たちを見尽くしてきた奈々は、何となく無気力になっていた。男なんてだいたい皆同じような生き物だ。今さらお決まり文句の「さしすせそ」で彼らを適当にあしらうのにも疲れてしまったような気がする。こういったテンションの落ち着きが、歳をとるということなのだろうか。

周りを取り巻く環境も、自分の外見にも特に目立った変化はなかったが、奈々は精神面に少しばかりの「老い」を感じていた。

自信たっぷりの若き商社マンは、景色が自慢の麻布十番のタワーマンション在住


「この眺め、最高じゃないですか?やっぱ東京タワーが見えるのはいいよなぁ。」

先ほどからこの麻布十番の『ヒルトップ カシータ』の景色を褒めまくっている広樹は、奈々より1つ年下の商社マンだ。ジャニーズ系の可愛い顔をしていて、本人もそれを十分に分かっている。この年代の商社マンにありがちなギラギラ感たっぷりで、まるで自分を中心に世界が回っているのかとも言わんばかりの自信で溢れている男だ。

そして何が気に入ったのか、1年程前からずっと奈々を口説き続けていた。この手のタイプの男にやすやすと口説き落とされ武勇伝ストーリーにされるつもりはない。しかしイケメン商社マンを完全無視するのは惜しく、何度か食事をするうちに普通に仲良くなってしまった。

「この景色は、いいっすねぇ。あ、ちなみに俺の家もあそこに見えるマンションです。ウチからの景色もここと同じような感じなんですよ。」

そうなんですね、素敵なお家なんでしょうね、と、ウェイターのお兄さんは完璧な笑顔を浮かべている。この店はホスピタリティの高さが売りなのだ。

奈々はプッっと吹き出す。広樹のこの子供のような素直さが嫌いではなかった。

饒舌に奈々を口説く商社マン。今日だけは流されてしまうその理由は...?


酒が進むと広樹は奈々を口説き始めた。毎度のことだが、ペラペラと饒舌に、よくもまぁこんなに沢山褒め言葉が出てくるものだと感心する。広樹は「口から生まれてきたような」という形容詞がピッタリだ。さらに髪を撫でたり手を握ったり、どんどん奈々に近づいてきた。

普段ならば適度にかわしてさっさと帰宅するのだが、今日は流されてしまってもいいような気分だった。数日前、1年付き合った彼氏に「結婚は3年くらい先」と言われ別れることになったせいか、友人の結婚式に立て続けに出席したせいなのかは分からない。何だか自暴自棄な気分だった。

「俺、本当に奈々ちゃんと付き合いたいと思ってるんだよ。そうじゃなきゃ、こんなに長く何もなしに会い続けないでしょ?」

珍しく受け身な態度の奈々に、広樹の口説きも加速した。

【東京いい街、やれる部屋】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ