東京いい街、やれる部屋 Vol.2

東京いい街、やれる部屋:京大卒の医者。派手な服装に違和感のある、彼の部屋とは?

前回のあらすじ

デートした男たちのライフスタイルを研究が趣味の、保険会社営業職の奈々。この連載では、様々な男性が選んだ街と部屋を奈々が解説していく。

前回は、麻布台在住戦略コンサルタントの部屋に訪問するも、部屋から見えた彼の性格に首をひねる。

さて、今宵のお宅訪問は、四谷三丁目の医師の部屋。優しくて爽やかで頭も良くて…そんな彼にも奈々が耐えられなかった欠点があった。

ETRO柄なシャツに違和感を覚えつつ、血筋の良さに狙いを定めた


「京都大学で生命科学について勉強していました。その後、医師になったので34歳とみんなより少し年上かな?」

目を細めていたずらに笑うその笑顔に、柄にもなく胸が高鳴った。同期主催の合コンで出会った彼は、高広さん。身長は170cm。週末にサッカーをしているせいか肌は少し浅黒い。新宿付近の大学付属病院勤務の医師で2年目。年収は600万円くらいだという。パネライの時計は武骨で気に入らない。シャツだって「それ、ETRO?」と聞きたくなる風変わりな柄。

普段ならお断りしたくなる彼だが、駒場にある中高一貫の男子校を卒業し、京大出身。赤坂で不動産業をしているという両親。そして、そんなステータスを鼻にかけることなく、誰とでも気さくに打ち解けるその姿に奈々の心は決まった。

同期の女の子たちにアイコンタクトでやんわりと牽制をし、合コンの終盤、横に座る高広さんだけに聞こえる声で、「今日、高広さんと話せて楽しかったです。今日来て、本当に良かった。」と上目遣いではにかんだ笑顔を添える。よほどのことがない限り、彼女の連絡を無視する男はいない。高広とは合コンの後も連絡を取り合い、次回のデートで5回目の食事となる。

東大、京大出身者に割と多いこの服装のタイプ


地下鉄四谷三丁目駅の出口を出て、交差点にあるオレンジの看板が目印のクリーニング屋を目指す。ジミーチュウの先にリボンが付いた黒のフラットシューズにRED VALENTINOのニットワンピ。J&M DAVIDSONのゴールドの鞄からスマートフォンを出すが、先に高広を見つけた。そして、その瞬間、奈々は自分の頬が若干引きつくのが分かった。

ブランドを聞けばそれなりのものを着ているのだが、今日のセーターは目がちかちかする緑と白のアラビスク模様と言うように、彼の服装は柄や色使いが奇抜なものが多い。ダサいのか派手なだけなのかと言われれば、どちらもだ。東大、京大出身者に割と多い、「服装に全く(あまり)興味がない」もしくは「服選びの基準がズレている」タイプに当たってしまった…。と、ため息をつく。

こんな服を着た男の隣を歩くのは、自分の価値を貶めることになりそうで普通の男であれば耐えられなかったが、彼の底知れない優しさに誘いを断るのは気がひけ、デートが続いている。奈々の話に一生懸命耳を傾け、奈々に喜んでもらおうとあの手この手で尽くしてくれる。今回も暖簾がかかる店構えが気になっていると話をしたことを覚えていてくれ、『ドミニク・コルビ』を予約してくれた。

前回のデータと、高広からは付き合いたいと気持ちを告げられているが、決断を先延ばしにしていた。

お店のフルコースは美味しかった。鱧に始まり鴨に終わるフレンチと和食の巡り合い、陽気なフランス人店主とのカウンター越しのやり取り、日本酒もワインも選んでくれるソムリエ。おいしい食事は、日々の生活の緊張をほぐし、心のつかえを取っていく。食後のカヌレを食べながら、奈々は温かい気持ちに包まれていた。ふと横を見れば、彼と視線が絡む。

「もしよかったら、うちに来ませんか?」

服装をはじめとする違和感があるも、食事も付き合いも断るほど、悪い人ではない。そして、もしも付き合うのなら、彼がどんな部屋に住んでいるかは見ておきたいという思いもあり、その誘いに乗ることにした。

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