東京いい街、やれる部屋 Vol.1

東京いい街、やれる部屋:麻布台在住コンサル男の、不自然なほど何もない部屋

「ハイヒールのヒールが1センチすり減ったら、すぐ捨てる。男も、そうやって変えてきた。」

保険会社営業職でアフター8を楽しみに生きる、奈々。28歳。キャリア?何それ?30歳間近で、結婚もしたい。でも、遊びたい!楽しいことだけに囲まれて生きていくのがモットーだという。

そんな彼女の趣味は、デートした男たちのライフスタイルを研究すること。奈々が見てきたのはどんな街、そしてどんな部屋なのか。その自由研究は今宵も行われているのかもしれない。

「おつかれさまでーす!」

颯爽と新宿のオフィスを出て、カバンからスマホを取り出し、ヒールをかつかつ鳴らしながら、LINEの未読メッセージをチェック。

気になる男性からの「今度ごはんいつ行こうか?」はもったいぶって既読スルー。
興味ない男性の俺通信はどうでもいいから未読スルー。
大学の友だち6人のグループLINEは「これから恵比寿で飲める人集合!」みんな20時半から集まれそう。久しぶりだし、行きたいけど…。

「ごめん、今日は外せないやつだ!またこんど!」そう打ち込んで、地下鉄へと急ぐ。

鞄はMiu Miu, コートはベージュのバーバリー。ロングの髪は内巻きで、目はまつエク140本で構成されるドールアイ。頬も唇もピンクに色づかせ、いざアフター8へ。

奥沢生まれ女子大育ち、お気楽な奈々の28年間


奈々の実家は自由が丘にほど近い奥沢。チェックの制服が可愛いという理由で品川の中高一貫の女子校を選び、大学はママが行っていたという理由で仙川にある女子大に推薦で入った。

勉強はまじめにやってこなかったので特段賢くはないけれど、地頭が悪いわけではない。自分で稼ぐお金はあってもなくてもどっちでも良いから、適当に受かりやすそうな金融を選んで、すぐに内定が出た保険会社に就職した。

学生のときも社会人になっても「楽しいことだけに囲まれてたい。」と口をそろえて言う女の子たちに囲まれて過ごしてきた。大学時代を思い返すと、インカレサークルの飲み会に合コン、六本木のタワマンパーティーと女子大生のお手本のように遊んでいたし、これからも何の不自由もなく遊べるものだと思っている。

だからこそ、自分がまさか「28歳。結婚の予定なし。」ってラベリングされるなんて本当に信じられない。結婚なんて自然とできるものだと思っていた。30歳目前なのにどうしてわたし結婚していないんだろう?ふと、昔の男たちを思い出す。

22歳春。戦略コンサル男との出会い


出会いはどこであるか分からないから東京では油断しちゃダメ。いつもそう思っているけど、達也さんとの出会いはまさにそうだった。

社会人になりたての頃。入社ほやほやの同期4人で渋谷の肉横丁。まだ研修も始まったばかりで、研修が終われば同期みんなで飲みに行ったのんびりしていた時期。同期の仲良しグループは10人くらい。内定者時代からもう連絡を取り合っていて、入社するまでみんなで何度も遊んで、飲んで、飲みつぶれているからもうすっかり気心知れている。

「あれ、美羽ちゃん?」

肉横丁のざわめきの中、声をかけてきた長身男性2人組。フェリス出身の美羽とは慶応とフェリスのインカレサークルで出会ったらしい。男性側も4人グループだったらしく、別のお店で8人で飲むことに。

この時、すごく話が盛り上がったのが、外資系戦略コンサルティングファームで働く達也さんだった。8歳年上の30歳。慶応経済学部卒業後、アメリカの州立大学でMBAを取って帰国。国内大手コンサル企業に就職して1年前に今のところに転職。年収は1,000万円超えていたと思う。

180センチの長身で「六本木のジム通いがマリファナ並にはまちゃって」と笑うけど、筋肉質な体つきにスーツが似合っていた。

渋谷での飲み会のあと、達也さんとは2週間に1回くらいデートするようになった。この日は4回目のデート。

「奈々ちゃん、麻布とか来たりする?行ってみたい焼肉屋があるんだよね。」

そう誘ってくれた彼のお家が麻布にあるのは、前に話してくれたから知っていた。淡い期待を抱かずにはいられなかった。

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