2016.03.02
東京いい街、やれる部屋 Vol.1達也さんが連れて行ってくれた『Cosott’e sp 麻布十番』は、スタイリッシュで雰囲気の良い焼肉屋さんだった。お店を出て、飯倉片町の交差点方面へ。目の前に出てくるのは、あの光。
「東京タワー、オレンジ色以外の光のことはダイヤモンドヴェールって呼ぶって最近知ったんだよね。」と言いながら、さっと手を繋いでくる彼はやっぱりかっこいい。
「俺の部屋で飲まない?」そう言われて、奈々はこくんとうなずいた。
麻布郵便局、ロシア大使館を横目に見ながら着いた先は、15階建てのエントランス付近が煉瓦と大理石でつくられたシックなデザイナーズマンション。このマンション名なんだか見覚えが。と思ったら、昔、乃木坂に住んでいた男性と同じマンション名だった。「シリーズレジデンス物件なのね。」と、どうでも良いことを思う。部屋に入った瞬間、思わず立ちすくんでしまった。
がらんとした何もない部屋。でもなんでそんなにお酒のストックがあるの?
「ビックリした?何もないでしょ。」
ざっと見て、1Kの30~35㎡。部屋にはベッド、サイドテーブル、テレビがあるのみ。部屋は妙に広々としていて、がらんとしていた。引っ越ししたてなの?と聞くと、衣服はクローゼットの中にすべて収まっていて、部屋は寝るだけだから、と言ってモノを増やすつもりはないらしい。
モノは増やさない。そう断言する様子に一抹の不安を覚える。もしかしてこの人…。
「まだ飲める?仕切り直しでシャンパンにする?ワインは赤白どっちもあるかな。ウィスキーでも良いし、ブランデーもあるよ。」
なんでそんなにお酒のストックがあるの?泊まりに来る子たちがお酒好きなの?ストイックな同僚しかいないって言いていたからお部屋に集まってとかは無さそうだし。
「Kiriy’s Freshのラスクがお家にあったから、持ってきたけど、チーズのほうがよかったかな?」
そんな疑問は飲み込んで、後ろから彼を追いかける。キッチンコンロの感じからして、10年以内の築年数だとすると家賃は16万円くらいかな。
「ごめん、自炊全くしないから何もなくて。」と言う彼のキッチンには、実家から持ってきたというバカラのペアのワイングラスに結婚式の引き出物でいただいたというティファニーのペアカップ。
この家で飲み会はやってないなと思いつつ、ふとキッチンから部屋を見てみる。
しかし、インテリアセンスは良いようだ。
ベッドは品のいいウォルナットフレーム。サイドテーブルはネルソン エンドテーブルの黒。1つの軸が床の手前でしゅるりと4方向に開く特徴的な形。
脚部の素材はアルミを使用し、すっきりとしたデザインは60年代のモダニズムデザインらしくはあるけれども、お店で見るときは軸の太さがどうにも気になり、優雅じゃないなと思っていた。けれど、何もない部屋で見るとアルミ素材がエッジの効いた曲線をうまく引き立てていて、こういう部屋のためにデザインされたのか。とジョージ・ネルソンの計算に気づく。
モノを排除した結果、かっこよく見えるのは当然。だけど、どこを抑えればセンス良く見えるかが分かっている。彼の部屋をみて、審美感覚の良さを再確認した。
デキる男に多い?神経質でミニマリスト
サイドテーブルにシャンパン、ラスク、オレンジピールを置いてベッドに座って、彼のパソコンで海外映画を観ながらふと気付く。
「ここ、高層マンションというわけでもないのにすごく静かだね。」
高層マンションのような遮音性の高いガラスでもなく、少し歩けば、六本木、麻布十番という夜遊びに絶好な土地なのに、まるで閑静な住宅街にいるかのよう。
たしかに飯倉片町交差点上の首都高は遮音されているし、都道319号(環状三号線)の本線と支線に挟まれたこのエリアには車も多く入ってこないのかと考えると納得だけど、立地とのギャップに驚く。
「そうなんだよね。ここに決めたのも静かだったからというのが最大の理由かな。むかし、渋谷の明治通り沿いに住んでいたとき、耳栓してないと寝れないくらいうるさくて。」
あぁ、出た。デキる男に多い神経質な一面。潔癖症、不眠症。神経質レベルはさておき、そんなきらいがある人が多い。
「モノが多いとイライラしちゃうというか。モノが増えれば増えるほど、ストレスが増えて全部捨てたくなっちゃうんだよね。」
やっぱりそうだ…。ミニマリストやかばんを極力持ちたがらない男性は神経質な人が多い。
彼女は2年くらいいないと言っていたけれど、このハイスペックな彼に長年彼女がいないなんてことはなく「オトモダチ」はたくさんいたはず。なのに、女の影が出やすい水回り(洗面台、お風呂、キッチン)にはメイク落としも化粧水も排水溝につまる長い髪の毛もなく、むしろ生活感すらない。
奈々の中ですごく不安が募っていく。この人、たぶん、たぶんだけど、すっごく神経質な気がする…。
「ねぇ、奈々ちゃん。俺たち付き合おっか。」
ベッドで横に座る彼が私の目を見て、どうかな?と膝に置く手をぎゅっと握ってくる。あ、どうしよう。すごい迷う。神経質な彼と付き合っていけるかすごく不安だった。
◆
終電もなくなっちゃったし、とりあえずその日は彼の家にお泊まりした。翌朝彼が寝ているうちに部屋を出て、物件のそばにあった7時から開いてる、バターたっぷりのクロワッサンが有名な『Maison Landemaine』の店内でクロワッサンを食べ、コーヒーを飲みながら、彼と付き合おうかどうしようか、物思いに耽った。
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