デートに誘った成澤の本心とは……? デート当日、二人を襲った事件
成澤にとっては、大学の先輩に拝み倒されて行った合コンだった。
拝み倒されたのに、苦手な店選びも任されてしまい、しょうがないのでお店の下見まで行った。そもそも合コンは苦手で早めに退散しようと思っていたが、漫画の話を楽しそうにしている美咲に惹かれた。見た目は“全方位キラキラ女子”なのに、ギャップがあって面白い。もっと話してみたいな…と思ったが相手にされない気がしたので、その後連絡はしなかった。
そんなとき、『聖☆お姉さん』の映画の続編が公開されると知った。いつもは引っ込み思案なのに、ここぞというときに行動力を発揮するのが成澤の特徴だ。早速LINEで美咲を検索し、無事デートの約束を取り付けることに成功した。
デート当日。車のエンジニアである成澤は、自慢の愛車で美咲を迎えに行った。
2か月ぶりに会った美咲を一目見て、彼女のその変化に戸惑った。4月に会ったときは化粧が濃く、素のままで美しい整った顔立ちの美咲には似合っていないと感じた。
しかし今日はメイクが薄めになっており、春らしい花柄のワンピースが美咲の美しさを一層際立たせ、そのピュアな華やかさに成澤の胸は高鳴った。
「迎えに来てくれて、有難う」
「斉藤さん、おひさしぶりです」
「確かにひさしぶりだね。あ、お父さんが乗っている車と同じ」
美咲はそう呟きながら、すっと助手席に乗り込んだ。それがあまりにもいつものデートのような雰囲気だったため、前もこんなことがあったかのように成澤は一瞬錯覚した。
成澤が運転席に座ると、すぐにいつもと違う車内の状況に気が付いた。甘いフルーツのような香りがふわっと漂っている。
「なんだかいい香りがしますけど」
美咲はクスッと笑う。
「いきなりなに言ってるの? 成澤さんってモテないでしょ」
きつい物言いは2人の姉に鍛えられているが、俺は男として見られていないのだろうかと少し肩を落とす。
今日はお台場にある映画館に行き、その後ドライブを楽しむ予定だ。成澤は期待に胸を膨らませながらエンジンをかけ、映画館へと車を走らせた。
出発から10分ほどして、美咲の携帯が鳴った。画面のメッセージに目を落とした美咲のカラダは、そのまま硬直している。車に乗り込んでからというものずっと美咲に気を遣っていた成澤は、すぐにその変化を感じとった。
「斉藤さん?」
「なんでもない……」
そういうそばからみるみる美咲の目に涙が溢れる。
「どうしよう。妹から連絡があって、お父さんが階段から落ちて意識不明だって……」
【第二話完】
●次回予告(4月22日公開予定)
久々のデートに心が躍った美咲。デート序盤で知らされた父親のアクシデント。果たして父親の容態はいかに?理系地味男子、成澤との関係は恋愛に発展するのか?そして、美咲は失恋を乗り越え、自分らしさを取り戻すことができるのか!?
<出演>中谷太郎、小板奈央美
<撮影協力>M/HOUSE