東洋経済・東京鉄道事情 Vol.3

山手線vs京浜東北線、"並行競走"の勝者は?

ここまで、あれこれ要素をあげて比較してみたが、結論としては“たいした差はない”ということ。「大森まで行くのに山手線に乗っちゃった」とか、「駒込で降りるのに京浜東北線に乗った」みたいなミスさえしなければ、“先にホームに入ってくる列車に乗る”。それ以上の正解はないようだ。

ちなみに、似たような区間として埼京線・湘南新宿ラインの大崎~池袋間がある。ただ、こちらはいずれも同じ線路を走っており、途中での追い抜きはないので文字通り“先に来た列車に乗る”が正解。

埼京線と湘南新宿ラインの大崎~池袋間は同じ線路を走っているため、先に来た列車に乗るのが正解だ(写真:ニングル/PIXTA)


さらに大宮まで区間を伸ばして考えても、湘南新宿ラインは田端方面へと大きく迂回することもあり、埼京線の快速と比べれば所要時間の差はせいぜい5分程度だ。

また、対私鉄では品川~横浜間の京急と東海道線がある。こちらはダイヤ上、約1分の差で京急のほうが速く到着する。ただし、運賃はJRのほうが10円お得だ。さらに前後の区間でJRを利用しているなら、わざわざ乗り換えるよりはそのままJRを利用したほうがはるかにメリットはあるだろう(もちろん乗り換え時間のロスもある)。渋谷~池袋間も地下鉄副都心線と山手線・埼京線・湘南新宿ラインが競合している。

しかし、埼京線と湘南新宿ラインは山手線からかなりホームが離れているし、副都心線はだいぶ地下深く、ハチ公前広場から乗車するまでは10分近くかかってしまう。となれば、その移動時間も考慮すると山手線での移動がもっとも効率的ということになりそうだ。

こうした例と比べてみると、いくら安全性や乗り心地で京浜東北線がいくぶん優れているとはいえ、その差はゼロに近い。となれば、あえてどちらを選ぶかを考える必要はやはりなさそうだ。


東京では「奪い合い」は少ない


ちなみに、関西では、長年私鉄とJRが激しい乗客争奪戦を繰り広げてきた。特に阪急VS新快速。元はといえば、阪急も阪神電鉄に対抗して“阪神急行”として誕生したという経緯もあるし、いたるところで乗客を奪い合ってきたのだ。ただ、その結果として福知山線脱線事故のような悲劇もうんでしまった。

対する東京では、私鉄とJRが並行する路線はそれほど多くなく、あっても乗車率がいずれもかなり高いので“奪い合い”というほどの状況にはなっていない。むしろ、混雑度を軽減するために同一事業者(主にJR)が並行する列車をどんどん走らせているくらいだ(それが山手線と京浜東北線であり、さらに言えばまもなく開業1年を迎える上野東京ラインである)。

何しろ上野東京ライン開業前までは、上野~御徒町間の乗車率は199%。山手線と京浜東北線を分けたデータではないので、どちらもこれだけ混雑していたということだ。そう考えれば、ますます“来た方に乗る”、それ以上の答えはない。

そしてその上で、いかに東京の鉄道が運行本数・乗車率とも異常な状況なのか、考えるきっかけにするべきとも言えそうだ。

著者
鼠入 昌史 :ライター

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