
東京札幌物語最終話:希29歳の春。戻れない場所と手放してきた物を積み重ねて大人になる。
北海道大学を卒業したのち東京の会社を中心に就職活動をし、渋谷にあるとあるインターネット企業に就職した北原希(きたはらのぞみ)。
会社で仲の良い友人もできて、東京での第一歩を歩み始める。合コンや、「東京の人だけがわかる店」の名前など、いくつかの試練?を乗り越え成長していく希。地元の恋人まぁくん、東京(調布)の男・二階堂との別離を経験した希は、すべてを持っている大人な男性。港区出身の兵藤と交際をスタートさせたが・・・
前回:希28歳。「すべて」を持っている大人な彼氏と付き合うということ。
3年ぶりの彼女からの電話・・・
昨日、希から久しぶりに連絡がありました。
「まぁくん、元気?彼女できた?」
彼女からの連絡は3年ぶりでしょうか?
中学の卒業式に告白して付き合ってからというもの、僕と希は、腐れ縁のように、別れたり付き合ったりを繰り返していたからこそ、この長いブランクの後の連絡が、意味するところが分かりました。
希は、昔から、僕が誰かと付き合いだしたり、彼女が恋人と別れた頃に、連絡をしてきますから、今回も、きっと、恋人と別れたのだろうと思いました。そして、そのぽっかりと空いた隙間に気まぐれに僕を思い出したのだろうと。
「彼氏と別れたんだ。」
想定通り、そう言った彼女のセリフからは、悲しみに混じって、少しの甘えと打算が顔を覗かせていました。
別離を繰り返してきた僕たちだからこそ、別れの重みはあまりなく、想像異様にライトだったと思います。「別れても、また付き合える」、「最悪の状況になったとき”最後の砦”になってくれる」そんな風に思っていたはずです。きっと、僕が"希と同じ立場"でも同じことを思うはずです。
そして、その先に希が僕に期待していることも想像できてしまって、僕は一瞬、どうしたものかと言葉に詰まりました。
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