賢い女は、笑いに含ませながら毒を忍ばせるもの・・・
その頃、会社同期のさとみも、サエコの熱愛の噂を聞いて苦々しく思っていた。
同期の女性達(彼女たちは揃って同期イチの派手なグループの女だった。)はランチタイムに揃うや否や、待ってましたとばかりにサエコの話題。
—ねぇ、聞いた?!サエコちゃんの次の彼氏、あの会社の社長だって!!—
—すごいよね。まさか同期が、あんなすごい人と付き合ってるなんて。—
—でも、なんでサエコちゃんなんだろうね。笑—
—私も思った!ぶっちゃけ、超絶美人じゃないのにね。—
少しずつ、少しずつ、笑いに含ませながら、同意を得て、エスカレートしていく女たち。大人の女の悪口というのは、いつもこの「規定路線」で推移し、収束する。
誰かが投下した火種は、あっという間に盛り上がる。そして、「素直に賞賛できる女」「寛容な女」と言わんばかりに、すごいね、さすがだねと、ひとしきり噂の女を賞賛するのだ。
しかしながら、女たちの間を飛び交う、賞賛の言葉は、ぽたりぽたりと、自らの心の中にある嫉妬の炎に油を注ぎ、メラメラと燃え上がらせる。そうして火柱をあげる嫉妬に、批判めいた冷水を浴びせて、毒で鎮火。消火作業が終わった頃には、あたり一面、焼け野原のように真っ黒だ。
特段口を挟むでもなくニコニコと眺めていたさとみが、ふと、思いついたように、口を開く。
「ねぇ、それよりさ。今度、弁護士の友達から合コン頼まれてるんだけど、皆でいかない?」
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