崖っぷちアラサー奮闘記 written by 内埜さくら Vol.4

崖っぷちアラサー奮闘記:銀座初出勤!今宵、招かれざる客のお相手をするハメに……!

前回までのあらすじ

北岡涼子、30歳、元女優。社会人経験なし、資格なし、貯金なし。芸能界で活躍したが、徐々に干されて今に至る。就職活動をしようにも、「綺麗」以外の特性がないため続々と不採用通知を受け取る。

そんななか大先輩の小田につれられて足を踏み入れた、銀座の超高級クラブ『銀華』の由紀ママにひょんなことから店にスカウトされる。

逡巡する涼子だが父親が倒れたという連絡が入り、もはや仕事を選べる立場ではないほど逼迫していることに愕然とする。すぐに由紀ママに連絡を取り、働き始めることに……。

そして今日が、銀座の蝶として働く初日である。

第1話:崖っぷちアラサー奮闘記:芸能界から捨てられた女の「これが私の生きる道」

第2話:崖っぷちアラサー奮闘記:とことん堕ちた女優の憂き目……そのとき彼女は?!

第3話:崖っぷちアラサー奮闘記:銀座☆夜の蝶デビュー初日レポ!イジメは、更衣室の奥で……!

 銀座の高級クラブ『銀華』での勤務初日の更衣室で、先輩ホステスから嫌味混じりの罵詈雑言を浴びせられたが、涼子は「こんなことで負けるわけにはいかない」と、気を立て直した。

——女優として売れずに所属事務所から解雇され、就職の面接に1社も受からなかったわたしにはもう、戻る場所などないのだから。

 そう心の中でつぶやき、涼子と先輩ホステスのやり取りをその場で見ていた倉田と名乗った女性に「気遣ってくれてありがとう」と礼を言い、ともにまた着替え始めた。

 涼子は今夜、由紀ママが快く貸してくれた、ラベンダー色のロングドレスを着ることになっている。ミニ丈を着るホステスもいるが、ミニ丈だとデコルテと腕と胸の谷間のほかに脚まで露出することになり、上品さが損なわれる可能性がある。その理由から、ホステスに品性を求める銀座では、ロング丈が奨励されている。ミニドレスが禁止されているわけではないが、頻繁に着用すると注意されるケースもあるという黒服の教えを思い出して涼子は、「今夜のドレスをこれから買うときの参考にしよう」と決めた。

 フロアに持参するクラッチバッグは自前である。中に入っているのは、携帯電話、名刺入れ、ハンカチ、ライター、口紅、メモ帳、ボールペン。基本のこの7つも、黒服からの教えである。着替えを終えてから仕事道具がそろっているかをあらためて点検し、涼子は倉田とともに更衣室の出口へと向かった。

 涼子が扉を開けた瞬間、先ほどの先輩ホステスが素早くこちらに歩み寄り、また嫌味を言った。

「あなたが遅いと後がつかえて困るんですけど!」

 涼子たちと入れ替わるように更衣室へ入っていくその背中に、フロアにいた女性が声をかける。

「杏奈ちゃん、もっと優しく教えてあげて頂戴」

 そして、にこやかな笑顔を崩さぬまま、涼子たちに視線を向けた。

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