リアル働きマン葉子!黒革の編集手帳 written by 内埜さくら Vol.4

リアル働きマン葉子!お節介な既婚女友達からあてがわれる未来

前回までのあらすじ

食雑誌である『月刊東京ウォーキング』の編集者・高嶋葉子(35)は、この道10年目の中堅、未婚、適度に遊んで年下彼氏は年収320万円

会えば「早く結婚したほうがいいよ」と、直球で意見をいう大学時代の同級生松川亜由美とのランチ。結婚して一児の母である亜由美の“大事な話”とは……?

 松川亜由美は待ち合わせ場所を、リッツ・カールトン東京の45階にあるロビーに指定した。久しぶりに『日本料理 ひのきざか』の松花堂弁当が食べたいという。

30の声を聞く直前に2歳年上の大学の先輩と結婚し、32歳で出産した亜由美は現在、専業主婦をしている。そしていまは、バリバリ働く葉子との月に一度のランチを楽しみにしていることが、独身時代と変わらない落ち着いた色合いのシックなワンピースで決めたその着こなしからも見て取れる。

一方で、結婚前、海外の老舗化粧品メーカーの広報としてバリキャリだった彼女が、一抹でも社会に触れたいと欲するのは当然であろう。「久しぶりに」という言葉から、ビジネスで訪れていた店の空気を再び味わいたいことも、たやすく想像できた。

亜由美が楽しみにしてくれることと同等に、やや強引に誘ってくれる彼女を、葉子はありがたく感じている。編集という仕事は急なトラブルに見舞われることも珍しくないため、プライベートの約束を浸食されることがままあり、自分から誘うことには消極的になっているからだ。

現に今週も、撮影3日前の夜8時半に、出演予定だったタレントが突如キャンセルとなり、おおわらわで別の候補を探すハメに陥り、京太郎との約束を延期した。

「待ってると思うと気にしちゃうでしょ、男友達と飲んでくるから」と、優しい声で笑う京太郎の話を終わりまで聞かず、葉子は電話を切ったことを今、思い出した。

そういった業務の特性を理解してもらうことは難しく、疎遠になってしまった友人もいる。だからこそ、遠慮せず呼び出してくれる亜由美の存在がありがたい。

「ねえ、同じサークルだった清水沙織って覚えてる?」

 上げ膳据え膳なんて久しぶり、松茸も鮑も今年初めてと、秋めいた彩りで華やぐ会席弁当を前に、現状報告や花やしき男などで、ひとしきりはしゃいだ後の亜由美に聞かれた。

「ライバルだったから、もちろん覚えてるよ」
「そうだったね~。和也君だっけ? 彼女と奪い合った仲だったよね」
「太田和也君ね。でも彼、3年のときにお父さんが亡くなって、お母さんと妹さんの生活を支えるために地元に戻っちゃって……」
「それまでは彼女より、葉子に分がある感じだったよね」
「そうだったかなあ。で、彼女がどうしたの?」
「離婚したって、電話で知らせてきたの。原因は相手のDVだって。元旦那は上場企業のエリートだから、お金に目がくらんだのかもしれないけど、見抜けないものなのかしら」
「かなり事情に詳しいけど、亜由美、そこまで仲が良かった?」

 聞けば、大学時代のつてをたどり連絡をしてきた沙織は、養育費の話し合いすらできぬまま、1人息子とともに逃げ出したことまで洗いざらい話したという。手に職を持たない沙織は経済的不安から、自分に再婚の縁頼みをしてきたのでは、というのが亜由美の見立てだ。わけへだてなく誰にでも笑顔で気さくに接する、顔が広い亜由美に、万策尽きてしがみついたのだろう。

「それでね、一応旦那に彼女の話をしてみたら、1人いるっていうの。だけどその彼には清水沙織じゃなく、葉子のほうが似合うはずだから紹介しようと思って。それが今日の大事な話」

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