カリフォルニア州に次いで全米ワイン生産量2位を誇るワシントン州。その中でも、シアトルマリナーズの本拠地であり、グランジロックの発祥地でもあるシアトルのワインが、近年急速に注目を集めている。
前回に引き続き、人気レストランCasita(カシータ)の元総店長 柳沼憲一さんをゲストにお迎えし、シアトルワインの魅力について語っていただいた。
(インタビュアー:文房具カフェ代表、ソムリエ 奥泉徹)
日本にはほとんど入ってこない、地元で愛されているシアトルワイン
カシータの総店長だった柳沼さんは、当時のお客様からの紹介がきっかけでシアトルワインとの出会いを迎えた。すぐにその魅力に虜になり、即決でワインリストに加えたいと申し出たという。
「シアトルでつくられるブティックワイン(小規模かつワインづくりにこだわりを持ったオーナー達が運営しているワイナリーで造られたワインのこと)は、生産本数が少ないのも手伝って、人気の銘柄はほとんど国外に出ません。
何より、自分たちがこだわりを持ってつくったワインを地元で消費することで、豊かな人生を送ろう!的な気風があるんですね。地元を愛しながらワインづくりを営む、このようなワイナリーを紹介しているのがフォズグループです。」
フォズグループ公式ページ:http://www.thefoz.jp
その魅力は自由でポップなカルチャー
「まず何より自由さを感じます。フランスやイタリアなどの旧世界をリスペクトしつつ、自分たちがいいと思うものを楽しみながらつくっている。
シアトルはIT企業が集まっている地域でもあり、若くしてドロップアウトしたベンチャーの創業者などが、ワインづくりを始めている例などもあります。もったいぶらずポップに飲むテーブルワインといった感じが何より私は好きですね。」
おすすめの1本を飲ませて欲しいとお願いしたところ、持ってきてくれたのが写真の1本。カベルネソーヴィニヨン主体のボルドータイプの赤ワインだが、オーソニウスというギリシャの哲学者をワイン名に冠しながらも、たしかにどこかしら自由さというか気取らない魅力を感じた。さらには、2013年のものは残り2ケース、2014年で終了とあり、その非常に高い希少価値にも注目だ。
ちなみに、オーソニウスは人類史上最初のソムリエと言われている人物である。
日本でもブームの予感
「このワインをつくっている醸造家のショーンは、ワイン評論家の父を持ち、グランジなど地元の文化を心から愛している人です。ワイナリーにはポップカルチャーのポスターが自由に貼ってあったりします。上質のワイン、美味しい料理、素晴らしい友情に囲まれた三位一体の食事を最高の喜びと考え、実に丁寧なワイン造りをしています。」
ショーンのつくったワインから私が感じたのは、二面性。アメリカらしいパワフルさと、静的な滑らかさや繊細さが共存している。ボルドータイプのワインらしいブラックチェリーやプラム、木樽に由来するコーヒーやチョコレートのニュアンスと共に、不思議とコーラのような風味がある。なんともアメリカらしい自由なワインだ。
同時に、これは日本で飲んでも美味しいワインだなと思った。
実は、シアトルはアメリカで日本に一番気候が近いと言われる場所である。郷土料理をその土地で食べることが一番美味であるように、ワインもその土地の気候や風土を体感しながら飲むのがやはり一番美味い。そんなシアトルワイン、近々日本でブームになる日も近いかもしれない。
○柳沼 憲一(やぎぬま けんいち)
サービスクオリティマネジメントオフィス「フラットスリーマネジメント」代表。
1976年生まれ。イタリアンリストランテを皮切りに、学生時代はピザ店、イタリアンダイニングバーのアルバイトに明け暮れる。20代前半に下北沢「DUKE」などでバーテンダー・店長業務を経て、2002年、開業間もないレストラン「Casita」に参加。各マネージャー職を経て、2005年、移転のタイミングでカシータ青山本店を任される。2008年、業務拡大により総店長に就任。現場の運営全般、統括業務、コンサルティング部門、ケータリング部門など、ほぼすべての業務に関わる。2012年、カシータを退職し現職。人と人が関わる業種は全てサービス業と捉え、様々な現場でサービスリノベーションや提案を行う。
著書:『人気レストラン元総店長が語るサービスの本質』
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