都内最高峰の鮨職人『すし匠』中澤氏は、なぜ日本を離れハワイで勝負に出るのか?

平成の江戸前鮨と賞され、連日、食通を唸らせてきた『すし匠』の親方、中澤圭二氏が今年いっぱいで四谷を離れる。来春、ハワイに誕生する新店のカウンターに立つためだ。出発まで半年を切った、今の心境を中澤氏に聞いた。

所作も美しい。「さらしの仕事である分、技はもちろん心も大切なのが鮨屋。この商売がどれだけ素敵で素晴らしく、そして、大変かを次世代にしっかり伝えていきたい」。そうして、多くの職人を育て上げてきた

「さらば、トリ貝。さらば、ハマグリ。先日も、そんな気持ちになりました(笑)」。カウンター越しに握りを出す仕草をしながら、中澤圭二氏は言う。これで今年も終わりという旬のネタに、しみじみ感じ入ったのだという。

創業して26年。多くの食通を唸らせてきた『すし匠』から今年いっぱいで中澤氏は離れる。新天地、ハワイを目指して。

「もう一度、全然違う環境に自分を置いて、自分に何ができるのか試したかった」。最高の鮮魚が日本全国から集まり、舌の肥えた食通が客として訪れる東京。そんな恵まれた街で仕事を続ける自分に、改めて問い掛けたのだという。「職人として今もきちんと考えて仕事をしているか」

『すし匠』の代名詞ともいえる10日熟成「エイジングトロ」の握り

そして、同時にものすごいスピードで変わっていく食環境への懸念も氏にはあった。築地でも、最高の鮮魚が高値で海外に買われていく昨今。このままでは、日本の美味しい魚が日本人に届かなくなるのでは? という危惧だ。

ならば日本人が培ってきた「釣り方」という漁師の技術、正しく下処理する魚屋の「手当」という知恵を、世界に広めればいいのではないか。「そうすることできっと世界中、どこでも美味しい魚が手に入るようになる」。決断の背景には和食の未来を案ずる氏の使命感もあったのだ。

ハワイでの挑戦の舞台は『ザ・リッツ・カールトン・レジデンスワイキキ・ビーチ』。来春竣工する、このホテルの8階に新たな「さらし」の場を作る。

どうしたらこのネタが最高に旨くなるかを追求する。それが四谷『すし匠』の仕事。締め方によってシャリを替えるコハダの握りもまた然り

「本当にドキドキ、ワクワクしているんです」。新店で志すのは「東京でできないこと」。そのために年明けにはハワイへと旅立ち、「まずは現地の魚と友達になって、どう仕事をしたら最高に美味しい鮨になってくれるかを考える。答えはきっとある」

四谷は来年以降、どうなるか未定だが、「ウチの子たちは常にハングリーで、人や魚と通じ合うコミュニケーション力がある。やるとなったら、これまで通り、キチッとやってくれるはず。だから、何の心配もしていない」

そう、氏は多くの弟子たちを家族として育ててきた。その結束力は絶大。ハワイ行きを決めたのは彼らのためでもあった。

『すし匠』店主の中澤圭二氏。「ハワイならではの幸せになれる空間、東京に負けない味、そして、人を育てる。それが新店でまずやらなければならないこと。現地の魚介を使った鮨になりますが、日本人の魂を込めて取り組みたい」と新店を語る

「人手不足に悩む鮨業界ですが、僕がワクワクする背中を見せることで、若い子が将来の夢を思い描くことができる」

四谷で氏が鮨を握るのはもう半年もない。「魚が大好きで鮨が大好きでずっとやってきた。今は日本の魚たち、漁師の方と魚屋さん、ともに働いた従業員、家族に心から感謝しています。そして、何より、ずっと支えて下さったお客様に全身全霊で感謝申し上げたいと思っている」

こちらは中澤氏に感謝。今年の『すし匠』はありがとうの心が行き交う、幸せな空間となる。


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