2015.02.19
レストランで恋のシーソーゲーム(WOMAN) Vol.2「え・・・!」
浩平からのLINEの「ラボンバンスの新店」というキーワードに、仕事中にもかかわらず声が漏れた。
先月デートしたインターネット企業プロデューサーの浩平。
正直顔はいいが、可もなく不可もなくといったところ。よって結衣は「深入りの必要なし」の印を押したのだ。妙齢の女性にとって、刻一刻と失われていく若さと比例して下落する自分の価値を考えれば、1時間でも無駄にしてはいけない。
女性が男性とのデートを受ける理由は2つしかない。
相手の男性に興味があるか、お誘いいただいたレストランに興味があるか。
浩平からはあの後2回ほど誘いがあり(『うしごろバンビーナ』と『ビストロ間』)、店選びのセンスは悪くはない。しかし、結衣にとっては全部経験済みで終わらない仕事を投げ出してまで行くほどではない。仕事も忙しかったし、当日のドタキャンを重ねてしまった。
しかし、だ。『ラボンバンス』の新店と聞いて、結衣の食指が動かないわけがない。
ー浩平くんには悪いけど、あと1回だけご一緒しようー
『ラボンバンス』の新店『sudachi』は、『bingo』や『ペガソ』『春秋』など多くの有名店が軒を連ねる日赤通り沿いににあった。結衣が1時間遅れたにもかかわらず浩平は、嫌な顔ひとつせず文句も口にせず笑顔で迎えてくれた。完全に店目当てで、全く興味がない目の前の善良な男性(遅刻もドタキャンのことも責めない)に対して、結衣は少しだけ胸が痛んだ。
乾杯をすると、早速コースが始まる。スターターとして出された”クリームチーズの茶碗蒸し”は、悪魔的な美味しさだった。革新的な創作和食は、『ラボンバンス』に通じるところがあり、結衣の好みど真ん中だ。
その後も和食のベースを、守りながらも型を破ったような斬新なコース展開に、久しぶりに興奮していた。お金を払ってくれる男性への敬意を込め、デートではオーバーリアクションを意識している結衣だが、ここではそんな小細工が吹き飛ぶほど、次々に言葉が溢れてくる。(もはや、終盤には頭が悪い女のように「美味しい!」しか出てこなかった。)
「本当にうまそうに食べるねぇ」
料理のせいで、うっかり饒舌になってしまった結衣を笑顔で眺める浩平。口数は多くないが、食べるのが好きな結衣にとって、自分の素のリアクションで、こんなに嬉しそうにしてくれるなんて、全くもって女冥利につきる。
ふと店名の言葉の由来が気になりカウンター越しに店主に話しかけてみた。
「なんで『sudachi』っていう名前なんですか?」
「お客様の大切なとも“だち”と、もっと“す(素)”で楽しんでいただきたい。そして皆様の大切な方の“巣立ち”のステージとして使ってもらいたいという想いを込めてます。」
ー巣立ち、ねぇー
最近Facebookを開けば、誰かしらの「ご報告」が目につく。次々と巣立ってしまう周りの女性たちに少しだけ焦りがないといえば嘘になる。だけど、中途半端な相手で落ち着くわけにはいかない。
結衣は、目の前にいる善良な男性に目を向けた。
記憶の中から彼のスペックを引っ張り出してみて、少し落胆する。
そして、彼のお給料における今夜のデートにかかるお会計の割合を算出して心が痛む。
「ごめん、ちょっとお手洗い」
打算的な結衣でも、お会計を目の当たりにすると生々しさに罪悪感で心が引きずられそうだからあえて席を立った。
-浩平くん無理しちゃったんだろうな。さすがに2軒目付き合わないと可哀想だよね・・-
タダより怖いものはない、と昔の人はよく言ったものだ。
「店目当て」の代償は2軒目で引き受けなければならない。
■レストランで恋のシーソゲーム(MAN)第2話:2度のドタキャンからの『すだち』
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