~今の自分はスポーツあってこそ。多くの人に魅力を伝えて恩返しをしたい~
阪神ファンの熱心さが、野球にハマる一因に
金丸:しかし、てっきりヒロドさんも、私と同じで子どもの頃からのタイガースファンだと思っていましたよ。
ヒロド:ファン歴こそ短いですが、筋金入りは筋金入りです。かろうじて10年は経っているので、お仲間に入れてください(笑)。そういえば、アナウンサーになって最初に英語が生きたのも、阪神の現場でした。
金丸:ということは、外国人選手とお話を?
ヒロド:そうです。マット・マートン選手に。
金丸:おお!マートンですか。首位打者も獲ったし、外国人選手のシーズン最多安打記録を作った名選手ですね。
ヒロド:現場研修で「ヒロド、英語いけるよな。話しかけてこい」と言われて。もじもじしながら話しかけたんですけど、新人の私にも丁寧に接してくれて、忘れられない出会いです。マートン選手に親近感がわいて、野球との距離も一気に縮まりました。
金丸:今はどうか分かりませんが、当時だと、英語で取材できる女子アナウンサーは相当珍しかったのでは?
ヒロド:アナウンサーになりたてのときに、「英語が話せる」と認識してもらえたのは大きかったと思います。
金丸:ところで阪神ファンって、独特の連帯感がありませんか?
ヒロド:分かります。「阪神ファンです」と言ったときの食いつきが、ほかの球団と違いますよね。
金丸:阪神ファンだと分かった途端、急に仲間意識が芽生えて、知らない人同士でも構わず肩を組んでしまう。
ヒロド:家からユニフォームを着てくる人も多くないですか?伊丹空港や羽田空港でも、よく見かけます。
金丸:さすがに私は東京からは着ていけないので、大阪で着替えます。
ヒロド:えっ!?意外です。
金丸:日本シリーズで負けたときは、着替える間もなく慌てて飛行機に乗って、ユニフォームのまま帰りましたが。
ヒロド:それでこそ、阪神ファンですよ(笑)。
金丸:特に仲の良い選手はいるんですか?
ヒロド:例えば、梅野隆太郎選手は同学年です。ほかには、中川勇斗選手のように、高校時代から知っている選手とか。中川選手は京都国際高校時代に、甲子園で取材していますから。
金丸:そうか。『熱闘甲子園』を長くやっていらっしゃるから、そういう繋がりもあるんですね。
勝ち負けだけじゃない甲子園の魅力
金丸:『熱闘甲子園』の話を聞かせてください。勝ったチームと負けたチーム、ヒロドさんは主にどちらを取材されるんですか?
ヒロド:私は主に、負けたチームを取材しています。試合に負けて、悔し涙を流す選手は多いですが、それですべてが終わりではありません。宿舎に戻ったら、高校生らしく過ごしているところも見られます。
金丸:印象に残っている取材はありますか?
ヒロド:2021年の夏の初戦、豪雨によってコールドゲームになった試合があります。泥だらけになりながら投げ続けたピッチャーの子は、負けたにもかかわらず、「あんな豪雨の中で投げたのは、甲子園の歴史上ない」と笑顔で話してくれたんです。
金丸:見ている側からすると、勝敗ばかりが気になってしまうものだけど、甲子園に立つこと自体、素晴らしいことですからね。
ヒロド:その写真を番組のインスタグラムに上げたら、「笑顔を見られて良かった」というコメントがすごく多くて。
金丸:勝っても負けても、青春の1ページには違いない。それに負けたあとも人生は続きますから。
ヒロド:おっしゃるとおりです。高校野球に触れていると、人間的な部分を学ぶことが本当にたくさんあります。私にとってはただの野球ではなくて、「人生の教科書」なんです。
金丸:甲子園には不思議な力が宿っています。今までホームランを打ったことのない選手が大事な場面で急に打つこともあれば、注目されていたチームが初戦で負けることだってある。
ヒロド:金足農業が快進撃をみせた金農旋風とか、昨年の県立岐阜商業もそうですけど、必ずしも強豪が勝ち進むわけじゃない。そういうドラマにも惹かれますね。
金丸:それに試合に出ている選手の裏には、さらに多くの人がいるじゃないですか。
ヒロド:まさに。レギュラーだけじゃなくて、スタンドにいる子とか、裏方でチームを支える子にもエピソードがあります。
金丸:チームの強さとは、ベンチ入りしている選手と、そうではない部員や応援してくれている人たちのサポートを足し合わせたものだと私は思います。そして、選手たちの活躍は試合で見られるけど、それ以外は誰かが掘り起こさない限り、日の目を見ない。
ヒロド:ですから、代表校が決まったあとは、取材する私たちサイドも嵐のような忙しさです。全校にブワーッと取材をかけて、「こんなネタありました」「こんな子がいました」と出し合って、それを基にディレクターが構成を考えて。
金丸:でも、試合の展開によっては、事前に準備していたネタが使えなくなるようなこともあるんじゃないですか?
ヒロド:そうなんですよ。お蔵入りになってしまったり、差し替えが必要になったりすることも珍しくなくて。一番ヒヤヒヤしたのは、番組開始1分前になって「冒頭の7分間のVTRが流れない可能性が出てきたので、古田敦也さんとふたりで繋いでくれ」と言われたときです。
金丸:生放送でそのオーダー、怖すぎませんか(笑)。
ヒロド:投打の注目選手について解説してもらうとか、古田さんと急いで打ち合わせましたけど、生きた心地がしなかったです(笑)。15秒前に「VTRいけます」と声がして、なんとかなりましたが。




