A1:付き合う前の彼は、本当に完璧だった。
共通の知人に紹介されて、健二と初めて会ったのは食事会だった。メガバンク勤務の彼は、清潔感があって話し方も丁寧で、第一印象は申し分なかった。
「真帆さん、また会いたいので、連絡先を聞いてもいいですか?」
「もちろんです」
健二はその後の連絡も早かった。翌日には彼からLINEが来て、すぐにデートの約束が決まった。
そしてこの初デートで、私の心はしっかり健二に掴まれることになる。
健二は、初デートに外苑前にあるイタリアンレストランを予約してくれていた。
素敵なお店にテンションが上がる。話していて楽しいし、「いい人だな」と思っていた。
ただ正直に言うと、それくらいの印象止まりだった。
しかしここから、健二はすごかった。
食事が終盤に差し掛かった頃。店内が、突然暗くなった。そしてどこからか、店員さんの「Happy Birthday〜」という歌声が聞こえてくる。
― あぁ、誰かのお誕生日なんだ。
そう思い、私も思わずキョロキョロと主役を探しながら、拍手をする準備をしていた。
すると、そのケーキはまさかの私の目の前に運ばれてきた。
「真帆ちゃん、27歳のお誕生日、おめでとう」
「……え?え!?私?嘘でしょ?」
これには、さすがに驚いた。確かに前回、「誕生日が近い」みたいな話をしたかもしれない。
でも一瞬のことだったし、私自身も話したことすら忘れかけていたのに…。
「そう、真帆ちゃんだよ。この前、誕生日が近いっていう話をしていたから」
「覚えていてくれたの…?嬉しくて泣きそうだよ。健二くん、ありがとう」
そのうえ、花束まで用意してくれていた健二には驚いたけれど、すごいなと思った。
しかも、健二は、初デート後も積極的に誘ってきてくれた。
私がふと「行ってみたい」と言った店を、次のデートで予約してくれていたり、好きなアーティストのチケットをサプライズで取ってきてくれたり…。
連絡もマメで、デートの翌日には必ず「昨日は楽しかった」とLINEが来た。些細なことだけど、その積み重ねはとても嬉しく、私もどんどん惹かれていった。
「この人、本気なんだな」
そう思った。そして初デートから3ヶ月が経った頃、健二はちゃんと告白をしてきてくれた。
「絶対大切にするし、真剣にこの先のことも考えているから」
そう言われて、私は笑顔で頷く。
「ありがとう。こちらこそ、どうぞ宜しくお願い致します」
こうして、交際当初から結婚を意識していた私たち。
しかし、交際期間が長くなるにつれて、一つの不安が私の心をどんよりと、覆い尽くす結果になってしまった。






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