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「麻布」のこれから。 Vol.1

志村けんが愛した、麻布十番。鮨店や蕎麦店など、彼流の街の歩き方とは

芸能人が多い麻布十番で、真っ先に名が挙がる有名人といえば志村けんさんに他ならない。

多い時では週6で通い、ボトルキープしている店を必ずはしごしていたという。

行きつけの4軒の酒場を巡り、志村さんが麻布十番を愛した所以を解き明かしてみた。



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◆麻布十番に今も息づく志村けんさんの酒場の言葉

志村けん氏のイラスト


酒場では多くを語らない志村さんだったが、ふとこぼした言葉たちはどれもお酒へのこだわりと人への思いやりが滲み出るものばかりだ。

行きつけの鮨店『いずみ』では、営業が落ち着いた頃を見計らって「みんな飲んでよ。一緒に話そう」と気さくにスタッフをねぎらっていた。蕎麦店の『麻布永坂 更科本店』では店が混み合うと「僕の分はゆっくりでいいからね」と気遣う。

公私を共にした『三と十』の店主は「君は絶対に成功する」と独立への背中を押してくれたと話す。『がいがい、』をはじめ贔屓にする居酒屋では「日本酒はワイングラスで」もお決まり。

そんな言葉を残した“行きつけ”を巡り、志村さんが愛した十番の夜をたどる。

◆行きつけの鮨店『いずみ』で、志村けんさんの粋な飲み方を知る

多い時は週5で通っていたという志村さんが寵愛した場所で、どんな酒を飲み、どんなアテをつまんでいたのか。

ここで過ごした時間を、思い出とともに店主に語っていただいた。

志村けん氏のイラスト

「窓から車の流れを眺めたり季節の移ろいを愛おしんだり。ひとりで来店されても途中で誰かが合流して、この席でお酒を酌み交わしていました」(『いずみ』店主・和泉さん)


「にんにくが大好きで、青森の田子町産を志村さんが持参されることもありました。鉄砲巻きは山葵をばっちり効かせて、食べるといつも『ん゛ん゛っ!』と顔をしかめて笑っていましたね」とは、鮨店『いずみ』店主の和泉 亮さん。

テレビ関係者の紹介をきっかけに、ここへ通うようになり、出演番組の打ち上げを貸し切りで開催するなど、付き合いは10年以上だ。

この街らしく、メニューはなくおまかせコースのみ。鮨がメインだが、魚や海鮮以外のメニューも取りそろえ、「鰻の串焼き」も名物のひとつ。

コースは時価だが、予算1万円程度でたらふく飲み食いできる満足度の高さも、志村さんを魅了した。

ロールスロイスが店の前に止まる。そんな光景が麻布十番の日常だった

麻布十番『いずみ』の外観

鳥居坂下近くのビル2階に入居する『いずみ』。入り口はこぢんまりとしていて隠れ家的だが、2階に広がる店内は広々。人通りの多い大通り沿いにあるので、窓側の指定席に座る志村さんの姿を外から発見したことがある人もこの街では少なくない


志村さんの目印となっていたのが、愛車のロールスロイス。

店の前の環状3号線沿いや、すぐ近くのガソリンスタンドに停車していることが夜の日常風景で、それが麻布十番に志村さんが来ている合図として街の人たちに認識されていた。

街並みが美しく移り変わる黄昏時に、窓際で東京タワーを見上げていた

麻布十番『いずみ』の内観

窓側席は“志村シート”としてファンの間で知られ、この席を予約して訪れる人も。店内を一望できる


カウンターの窓側が指定席で、シンガポール大使館の木々から少し顔を覗かせた東京タワーを眺めつつ飲むのが好きだったそう。

「満月の夜は月明かりが綺麗に見えるように消灯するって知ってる?東京タワーって粋だよなぁ」と垣間見える博識な一面も魅力だった。

麻布十番『いずみ』の志村けん氏の名言が描かれたワンカップ


カウンターの角には、そんなファンたちがお店に寄贈した志村さんの名言が描かれたワンカップが鎮座する。

「僕はね、人の笑った顔が好きなんですよ。」

まずは鮨3種。光り物に鉄砲巻き。酒を愛した志村さんの“お決まり”のアテ

麻布十番『いずみ』の「握り」

志村さんの定番握りはまぐろ、鯵、イカ塩


最初に「握り」を3種類、次に「光り物」を刺身でつまみ「鉄砲巻き」で〆る、がルーティン。

麻布十番『いずみ』の刺身

「光り物」はイワシ、秋刀魚など


刺身はおろしにんにくでいただくのも志村さん流。

麻布十番『いずみ』の「鉄砲巻き」


山葵をしっかり効かせた「鉄砲巻き」。

麻布十番『いずみ』の志村けん氏のネーム入りの焼酎ボトル

ネーム入りの焼酎ボトルは、今もボトルキープの棚に並んでいる。※志村さん限定のオーダー方法でメニューはおまかせコース時価のみ


日本酒はワイングラスで飲むことが多かったが、ここでは南部鉄器の酒器で飲むのも気に入っていたそう。

いずみ(麻布十番) | デートに使える東京のレストランはグルカレで予約

◆志村けんさんの日常を辿る、麻布十番の歩き方

ある夜は後輩芸人を引き連れて、またある夜は素敵な女性と一緒に。

一時代を築いた大スターが等身大で過ごした酒場を、足跡を追うように巡る。

志村けん氏のイラスト

変装することもなく、派手な私服で街を歩いていた志村さん。「パティオ十番」周辺で犬を連れて散歩する姿や、スーパー『ナニワヤ』で買い物する姿などもよく見かける光景だった


かつて麻布十番に住居を構え、長きに渡りこの街で暮らしていた志村さん。「地元の人と仲良くなりたくて」と商店街や飲食店に通い、大物なのに飾らない親しみやすい人柄で街の人たちからも愛された。

その当時の話をご本人からよく聞いていた『いずみ』の店主・和泉さんは、「昔の麻布十番はどこか閉鎖的な雰囲気でしたが、志村さんのおかげで街全体が変わり風通しが良くなった」と話す。

晩年は三鷹の邸宅で過ごしたが、“十番”への愛着は変わることはなかった。

気に入った店ができると、とことん通い詰めるのが志村さんの気風。そのひとつが、鉄板焼き店の『三と十』だ。

「修業時代から目をかけてもらっていた」という店主の御山哲史さん。店終わりに一緒に飲んだりプライベートで旅行に行ったり、御山さん夫婦の婚姻届の証人にもなってくれた志村さんは、第2の父親だ。

「普段飲む時は寡黙な志村さん。でも僕が独立しようか迷っていたら『チャンスってのは頭の周りを回ってる。目の前に来た時に掴んだ奴が成功するんだ』という話をしてくれたんです。『俺には今、お前の目の前にチャンスが来てるのが見えている』と。その言葉で、頑張ろうと覚悟を決めました」

“水割りはかき混ぜない”のが、志村さん流のお酒の飲み方


いつも座るのはカウンターの角席か、「掘りごたつが好きな志村さんのために作った」という奥の小上がりの個室。

最初は芋焼酎の水割りか「ケンゾーエステイト」の白かロゼを、にんにくチップをつまみに一杯。

麻布十番『三と十』の芋焼酎の水割りとにんにくチップ

芋焼酎の水割りとにんにくチップをつまみ、料理を待つのが志村さんの定番だった。グラスやコースターも専用のもの


ウイスキーでも“水割りはかき混ぜない”のが志村さんスタイルで、これはどの店でもこだわりの飲み方だった。

「お酒が強くて大好きで、カウンターにマイボトルを並べて『次はこれ飲もう』って楽しそうに飲まれていました」

デートで訪れることも多く、「可愛らしくて、よく笑い、よく飲む子がお好きでしたね」と色恋事情もポロリ。飲む時は静かで言葉は少なく、声も小さい。素顔の志村さんはテレビとは異なる一面も。

とはいえ近寄りがたさはなく、隣客に話しかけたり、スタッフにも「手が空いたら一杯飲みなよ」と声をかけたり、周りの人を気遣う優しい性格だったと懐かしむ。

常に2席をキープしていた毎晩の食堂的存在
『三と十』

麻布十番『三と十』の内観

細長い店内は、手前にカウンター、奥に小上がりの座敷席と個室を用意


網代公園の向かいにある、隠れ家の鉄板焼き店。

黒毛和牛のステーキや魚介の鉄板焼き、お好み焼きなどを良心的な価格で味わえる。志村さん考案のメニューも多数。

麻布十番『三と十』の「国産牛のフィレステーキ」


「国産牛のフィレステーキ」(¥5,200)を好んで食べていた。

三と十(麻布十番) | デートに使える東京のレストランはグルカレで予約

正月にはスタッフ全員に“お捻り”を渡す粋な計らいも


飲む時は1軒で終わらず、行きつけを2〜3軒はしごするのが志村さんの流儀。

中でも長年通い続けていたのが老舗の蕎麦店『麻布永坂 更科本店』だ。

麻布十番『麻布永坂 更科本店』の内観

よく利用していた1階席の個室。志村さんは手前奥に必ず座っていたそう。ダチョウ倶楽部や千鳥など、仲良しの芸人仲間と来店することも多かった


「先代の時代から通ってくださっていました。夜いらっしゃることがほとんどですが、たまにフラッと16時頃からおひとりで飲みに来られることも」と教えてくれたのは、勤務歴17年の店長の半藤朋生さん。

数人の時は1階の個室を利用していたが、ひとりの時は「ここでいいよ」と、ほかの客に挟まれてテーブル席に着くことも。スタッフと世間話をすることもあり、「本当に気さくで飾らない人でしたね」と振り返る。

「『いつものちょうだいね』とスタッフに告げ、蕎麦焼酎の蕎麦湯割りと板わさで晩酌がスタート。はしごするから蕎麦は食べず、蕎麦前だけ楽しんでいくのがいつもの志村さんでした」

正月にはスタッフ全員にお捻りを配り、感謝を伝えることも忘れない。志村さんの粋な酒の飲み方は、十番の至るところで今も語り継がれている。

収録スタジオ帰りに仕事仲間と語り合った
『麻布永坂 更科本店』

麻布十番『麻布永坂 更科本店』の「だし巻き」、「吉兆雲海」の蕎麦湯割り

出汁をたっぷり使った「だし巻き」(¥693)もお決まりの一品。蕎麦焼酎「吉兆雲海」の蕎麦湯割り(¥550)と一緒に


新一の橋交差点の角にある、昭和25年創業の老舗蕎麦店。

喉越しがよく繊細な味の更科そばが人気。和食専門の板前による、酒の肴や一品料理も本格的だ。

■店舗概要
店名:麻布永坂 更科本店
住所:港区麻布十番1-2-7
TEL:03-3584-9410
営業時間:11:00~LO20:30
定休日:水曜
席数:テーブル20席、座敷4席、個室2~30人

カウンター角の2席で、焼き鳥デートを楽しんでいた


女性とふたりで、街中を堂々とデートする姿もよく目撃されていた。

朝5時まで営業している和食居酒屋『がいがい、』には、時に志村さんと女性が一緒に訪れることも。

麻布十番『がいがい、』の内観

炭火台を眺めるカウンターの角が指定席だった


いつも座るのはコの字型カウンターの一番奥。入店すると真っ先に目に入る席なのだが、「店内を見渡せるこの席が好きなんだよ」と身バレも気にせず深夜飲みを楽しんでいたという。

行きつけの店には、必ずマイグラスが用意されている志村さん。

「店から贈らせていただいたバカラのグラスで、『伊七郎』や『山崎』の水割りをよく飲まれていました。ワインを飲む時は、ブルゴーニュの白を口の広い赤ワイングラスで。日本酒も『香りが広がるから』とワイングラスで飲まれていて、グラスへのこだわりは強かったですね」とは、同店の店長。

ある時、つくねに添えられた余った黄身がもったいないからと、「お供えごはんでいいから少しよそって」と小さなTKGにして食べたそう。それが今では定番サービスに。

とある後輩の人気芸人と居合わせた際には、メニューにはない鶏だしで作ったラーメンをサプライズで席に届けたことも。そんな時は、志村さんがこっそりと後輩のお会計も済ませる。美味しいお酒と料理、そしてその場にいる人の喜ぶ顔が、志村さんの好物だったのだ。

“かき混ぜない水割り”を飲みながら、街に店に愛された希代のスターの酒場の生き様に思いを馳せてみるのもいいだろう。

朝5時まで営業する深夜の最終到着地点
『がいがい、』

麻布十番『がいがい、』の「鶏刺しの盛り合わせ」

「鶏刺しの盛り合わせ」はレバー、笹身、ハツなど5種類を半量盛りで提供。¥2,640


人気の和食居酒屋。炭火の焼き鳥や野菜の串焼き、刺身など酒肴が充実。

「鴨南蛮のつけそば」(¥1,980)は志村さんのリクエストでメニュー化。個室もあり業界人の常連客も多い。

麻布十番『がいがい、』の「にんにく」「レバー」「せせり」


焼き鳥は「にんにく」「レバー」「せせり」を必ず注文していた。ごま油におろしにんにくで。各¥250~。

がいがい、(麻布十番) | デートに使える東京のレストランはグルカレで予約

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