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TOUGH COOKIES Vol.46

夫と別れたあとの後遺症がひどくて…。妻でも母でもなく、女として生きた彼女の末路

SUMI

「壊した、とは?」

その先を促しながらも、ともみは少し聞くのが怖いと思った。

「彼には社会的立場もあったし、ばれた以上、重婚からはもう手を引きたかったんでしょう。彼の弁護士から、これ以上連絡をしないで欲しいと、大金を条件に交渉に来た時も、お金よりも、ただ彼に会いに来て欲しいことを伝えました。アメリカの家族の邪魔は絶対にしない。日本にいる間だけの家族として過ごせればそれでいいからと。

でも彼は私たちに会いに来るどころか、その時既に日本からいなくなっていたみたいなんです。そしてもう、二度と日本には…」

ウソで騙して子どもを作った挙句に、後始末は他人に任せて逃げ出した。むしろ、そんな男が、今ルビーの父親だと名乗っていなくてよかったと思うほどの最低っぷり。ともみはこみ上げる怒りを、白茶を飲むことでなんとか抑えた。

「私もルビーちゃんも、完全に捨てられたんだと、その現実を認めなさいと、母にも随分叱られたのに、私はずっと、受け入れることができないままだったんだと思います。

それでも何とか新しい生活を始めたつもりだったんです。でも…」

思い出せば苦しくなったのか、明美は胸を押さえて、小さく細く息を吐き出してから続けた。

「誰よりも会いたいのに、会えないその人に、ルビーちゃんはどんどん似ていきました。私の誕生石がルビーだから…彼からの初めてのプレゼントはルビーで。2人の宝石が生まれるねって、ルビーって名前も彼が選んだから。

ルビーちゃんのことが愛おしくて仕方ないのに、瞳の色が同じ、笑顔が同じ、とふいに彼が現れるんです。そのうちに息ができないような苦しさで動けなくなったりして。忘れようとすればするほどダメで…」

「だから…ルビーから逃げだしたんですか?」

明美は黙ったままうつむいた。ともみは苦々しい気持ちになる。

子どもを産んだからといって、誰もが自動的に良い母親になれるわけではないことは、まだ子どもを産んだことのないともみにも理解できる。けれど、明美のベクトルは。

― 去った男に向きすぎていた。

子役としての娘を支えることに全身全霊を注ぎ、むしろ夫を蔑ろにしていた感さえある母に育てられたともみには、想像もできず、今すぐルビーを抱きしめに行きたい気持ちにかられた。


「彼とはどこで出会ったんですか?」
「大使館のパーティでした。日本初上陸のカリフォルニアワインのお披露目会を彼が主催していて。私が20歳になってお酒を飲めるようになった記念に母が連れて行ってくれて」

ともみは、ルビーが浅草にある老舗料亭の孫であることを初めて知った。明美もそれなりのお嬢様として育ち、インターナショナルスクールに通っていたことから英語はネイティブなみに堪能。有名私立大学の英文学部に在学中に、ルビーの父親と出会ったのだという。

その時、男は33歳だったというから、大人が子どもに手を出した感は否めないけれど、夢中になったのは明美の方らしい。パーティの後すぐに、男性の会社にインターンに入ることになり、プライベートの案内もするようになると、2人はすぐに恋人同士になったという。

日本では英語が通じないことが多い分、外国人は英語が話せる女性と恋に落ちやすい…という光景を、ともみは港区でも散々みてきたけれど。

「この場限り…というか、遊ばれてるとは、全く思わなかった?」

「母にも同じことを言われましたけど、彼のことを信じていましたから。彼は愛を言葉にも態度にも表してくれたから…」

自虐的な笑みを浮かべて明美はもうひと口、白茶を口にした。「甘みが増した気がします」と微笑んだはずの瞳から、涙があふれていく。

この記事へのコメント

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No Name
PTSDかぁ… 病気が絡むとルビー母を責める事も出来なくなるけど、やっぱり一番の被害者はルビーだしとても複雑な気持ちになる。 ルビー♡ミチの可能性もゼロではないよね。
2026/01/13 05:2117Comment Icon1
No Name
突然彼と会えなくなった事は本当に辛いだろうし心中お察し申し上げるけど、そんな時こそルビーを守る行動をするのが母親の役目でもあるのにと思ってしまう。 会って話し合えないならこちらから出向きますよとか、そしたら彼も家族にバレるので一度は会って謝罪したのではと。そこで訴えない代わりに和解金と養育費をこれでもかという額で請求。 実家の老舗料亭にも出資してもらってとか。 そうすればルビーを海外のボーディングスクールに入れる等出来たはず。施設はあり得ない。
2026/01/13 07:0410
No Name
ルビーもミチとともみお似合いだと思ってたのかーからのルビーのミチへの片思い!
ルビー幸せになってほしいよ
ミチ気づいて振り向いてほしい
2026/01/13 07:069Comment Icon2
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TOUGH COOKIES

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが

その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

心が壊れてしまいそうな夜。
踏み出す勇気が欲しい夜。

そんな夜には、ぜひ
BAR TOUGH COOKIESへ。

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