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TOUGH COOKIES Vol.46

夫と別れたあとの後遺症がひどくて…。妻でも母でもなく、女として生きた彼女の末路

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが、その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

タフクッキーとは、“噛めない程かたいクッキー”から、タフな女性という意味がある。

▶前回:最低なことをする彼でも「愛しているからいい」と思ってしまう女性心理とは

Customer 7:小酒井明美(こさかいあけみ・44歳)/ルビーを捨てた、ルビーの母親


「余命、1年くらいだそうです」

やけに明るく放たれた明美のその言葉を疑ったわけではない。けれど困惑で固まったともみに、明美はさらに笑顔を大きくし、「ルビーちゃんには絶対に内緒にしてくださいね」と繰り返した。

「なぜ、ルビーには伝えないんですか?」
「だってあの子が知ってしまったら…」
「優しすぎて、あなたに同情してしまうから?」

明美は否定も肯定もせず、ただ恥じ入るように唇を噛んだ。

「謝る資格すらないことは、分かっていました。でもこのあと…入院することが決まっていて…ルビーちゃんの前から本当に消えてしまう前に…」

一目でも会いたかったのだろう。明美が詰まった言葉を想像しながら、まともに一緒に暮らしたこともないのに、ルビーの優しさが分かるものだろうかと不思議に思う。

そもそもタイムリミットを知らされたからと、慌てて後悔を手繰り寄せようとする、その姿勢にも共感できない。たとえそれが――命の終わりであっても。

― …って前の私だったら、突き放しただろうな。

けれど今は、明美の話を聞いてみたいと思っている。なぜルビーを捨て、その後どんな人生を歩んできたのか。そこに少しでも、ルビーが救われる何かがあればいいと、願っているからだろうか。

「ここからは…ルビーの、お母さんだということは一旦忘れます」

え?と驚いた明美に、ともみは微笑みながら言葉を重ねる。

「だから明美さんも、ルビーのお母さんとしてではなく――ただ1人の女性として、誰にも言えずに苦しんだことを、今日ここで、吐き出してしまってください」

迷うように視線を落とした明美を、ゆっくりと待つつもりで、ともみは湯呑を手に取った。ジャスミンのような香りがするはずの白茶、白毫銀針(はくごうぎんしん)だが、既に香りも失い、指先に触れる温度も低い。

「入れ直してきますね」

冷えてしまった茶器を温めるためにカウンターに戻り、ともみは水を足したケトルをIHプレートに置いた。ピッと短い電子音が、そしてシュンシュンとお湯が沸く音も、沈黙の広がる店内でやけに大きく響く。

「今度は温かいうちに是非」

入れなおされた白茶の甘い香りに誘われるように、明美は茶器を手にした。一口含んで、おいしい、と呟く。そして言葉に迷うように、口を開いては閉じることを何度か繰り返したあと、ようやく顔を上げた。

「私は本当にバカだったから……ともみさんには、呆れられちゃうと思うんですけど…」
「呆れたとしても、口にしませんから」

軽い口調でおどけたともみに、明美が少しだけ微笑んだ。

「私は……結局、あの人にしがみついてしまいました」

さっきは、別れたと言っていたはずなのに。疑問を浮かべたともみを察知したかのように、明美の笑みが自虐で歪んだ。

あの人にとって私は、2番目の妻でした。それが分かったから、許されることではないと、別れを選んだはずでした。でも離れてからも、私はあの人を恨むことも、嫌いにもなれなくて。それどころか恋しい気持ちが募ってしまった。自分から別れを告げたのに、ずっと、ずっと、考えてしまう。会いたくて、会いたくて、狂いそうでした。

そのうちに、バカな考えがよぎりました。彼だって私と別れたかったわけじゃない。私さえ2番目の女でいることを受け入れたら、ずっと一緒にいられるのではないかと。

そして彼に連絡してしまったんです。2番目の家族でいいから、私とルビーを捨てないでって。

でもあの人の答えはNOでした。それなのに私は…拒まれれば拒まれるほど、彼に執着して…その執着が、全てを壊してしまったんだと思います」

この記事へのコメント

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No Name
PTSDかぁ… 病気が絡むとルビー母を責める事も出来なくなるけど、やっぱり一番の被害者はルビーだしとても複雑な気持ちになる。 ルビー♡ミチの可能性もゼロではないよね。
2026/01/13 05:2116
No Name
突然彼と会えなくなった事は本当に辛いだろうし心中お察し申し上げるけど、そんな時こそルビーを守る行動をするのが母親の役目でもあるのにと思ってしまう。 会って話し合えないならこちらから出向きますよとか、そしたら彼も家族にバレるので一度は会って謝罪したのではと。そこで訴えない代わりに和解金と養育費をこれでもかという額で請求。 実家の老舗料亭にも出資してもらってとか。 そうすればルビーを海外のボーディングスクールに入れる等出来たはず。施設はあり得ない。
2026/01/13 07:049
No Name
ルビーもミチとともみお似合いだと思ってたのかーからのルビーのミチへの片思い!
ルビー幸せになってほしいよ
ミチ気づいて振り向いてほしい
2026/01/13 07:068Comment Icon1
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TOUGH COOKIES

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが

その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

心が壊れてしまいそうな夜。
踏み出す勇気が欲しい夜。

そんな夜には、ぜひ
BAR TOUGH COOKIESへ。

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