鮨も焼き鳥も注目店が盛りだくさんで活況
小石原:森脇さん、鮨は、実力派の新店が豊作な年でしたよね?
森脇:そうですね。まず、『すきやばし次郎』で10年以上の修業を積み、晴れて独立した川口雄大さんの『日本橋 川口』。それから銀座『青空』出身で大将経験も豊富と、安定感抜群な三井 祥さんの麻布十番『みつい』も。
それぞれ握りの完成度の高さもさることながら、川口さんはつまみに江戸料理を取り入れたり、三井さんはお酒のペアリングに工夫を凝らしていたりと、自分の店の個性をきちんと出そうとしているのが頼もしいですね。
小石原:7月に築地に突如現れた『芳尾』も評判です。御成門『冨所』できっちり技術を身につけた芳尾信治さんの鮨は、師匠譲りの男っぽい握りです。
中野:ご主人が若いこともあって、いい意味で“ハードルが高くない”雰囲気ですよね。おまかせでお願いしたのですが、お隣と違うものが出てきて、私の好みに合わせてくださっているの!?とびっくり。それに、こちらはおまかせ全盛の時代に“お好み”にも対応してくれるんですよね。
小石原:予約の時間も一斉スタートではなく、お鮨屋さんって本来こうだったなあと思わせてくれます。
船山:鮨と同じく和のカウンター業態ということで、焼き鳥についても触れたいです。よく噂を聞いたお店といえば、とにかく『酉囃子』です!
小石原:話題を独り占めでした。
森脇:鶏の銘柄も熱源も複数を使い分けていて、既存の焼き鳥の領域を超えたように思います。ご主人の林 裕太さんも「焼き鳥を料理に高めたい」とおっしゃっていて、下ごしらえから串打ち、焼きととにかく丁寧。合間のお料理も、独自色を打ち出しながらもやりすぎてはいない。加減がお上手。
中野:私は「高坂鶏」が好きなので『特選髙坂鶏 克つ鳥』のオープンが本当に嬉しかったです!「高坂鶏」の存在を広めた立役者・建守 護さんが携わっているので焼きも確かだし、一品料理にも建守さんのテイストが感じられて。渋谷でありながら隠れ家的な立地なのもいいし空間も素敵です。
7.『日本橋 川口』@日本橋
店主の川口雄大さんと、妻で女将を務めるホリーさんが営む『日本橋 川口』。
おまかせコース(¥33,000)のほか、昼には握りのみのコース(¥24,200)もあり。
8.『芳尾』@築地
若き大将が腕を振るう『芳尾』も話題。
9.『酉囃子』@麻布十番
神楽坂『焼鳥 茜』から『酉囃子』に。
紀州備長炭や薪火用の焼き台も設え、複数の熱源を使用。比内地鶏の「砂肝」にはぶどう山椒を忍ばせるなど随所に工夫が光る。コースは¥13,000。
チャイニーズ&アジア諸国の食体験がますます楽しい
小石原:渋谷、隠れ家的立地……といえばチャイニーズの『蓮華』もこなれた価格なのに、とても手をかけたお料理がいただけます。オーナーシェフの後藤吾基秀さんは『礼華』グループに長くいらして『礼華 青鸞居』では7年にわたり料理長を務めた方。渋谷と代官山の中間あたり、桜丘という密やかなロケーションも、むしろいい感じ。
森脇:ひと品ひと品工夫が凝らされていて繊細な盛り付けの前菜のプレートが印象的です。コースの構成もお上手だし、万人に愛されるお店ですね。
小石原:既存のイメージを覆す、きれいな北京ダックには驚かされました!
船山:同じ渋谷でも表参道寄りのグルメスポット、通称“渋二”こと渋谷二丁目エリアの新顔『Night Market』も話題になりました。
小石原:シェフの内藤千博さんは『レフェルヴェソンス』でスーシェフまで務めた方ですが、アジアへの興味が次第に募り、現地を訪れて見識を深めベトナム料理の『Ăn Đi』の料理長に。6年間活躍したのち、今年独立というユニークな経歴の人物です。
中野:「アジアの夜市」がコンセプトとのことですが、店内は洗練されているし、合わせるお酒はソムリエが選んでくれるワインが中心。“ガチ・エスニック”ではないアーバンな雰囲気が漂っているのが嬉しい。
小石原:お料理は、タイ、ベトナム、インドネシアなどアジア諸国のメニューに、日本の新鮮な食材や固有の調味料、自家製の発酵調味料などを組み合わせてあって、内藤さんのフィルターを通してマッシュアップした感じ。盛りつけの美しさも好印象です。
船山:チャイニーズでは『新楽記』の焼き物の美味しさに感動しました!
森脇:釜焼きのチャーシュー、皮がカリカリの豚バラなど、いわゆる「焼味」の盛り合わせは必食ですね。「古き良き香港の味を」がコンセプトで、「鮮魚の蒸し物」や、ハムユイを使ったチャーハンなどもたまりません。
小石原:アジア系では茅場町『可視化飯店』も、味わいとおしゃれな雰囲気とが共存していて、たちまち人気に。
10.『蓮華』@渋谷
店主・後藤吾基秀さんは、フカヒレ料理で知られる『筑紫樓』、そして麗しいヌーベルシノワが楽しめる、新山重治シェフ率いる『礼華』グループに16年在籍。
コースは「蓮華」(¥14,300)など。
11.『Night Market』@表参道
タイ、ベトナム、インドネシアなど東南アジア諸国の料理と、新鮮な食材や日本ならではの調味料、発酵技術などを融合させたエスニック。
南国リゾートのような空間で非日常を楽しめる。


















