古くから日本の一流が集まる街、銀座。
高級な街の印象とは裏腹に、実はディープにハシゴを楽しめる地でもあると、呉服店「銀座もとじ」の泉二(もとじ)啓太さんが教えてくれた。
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ナビゲートするのは……
「銀座もとじ」代表取締役社長・泉二啓太さん
1984年生まれ。ロンドンの大学でファッションを学んだのち、父が1979年に銀座に創業した呉服店「銀座もとじ」に入社。2022年、代表に就任。商品開発に携わるほか着物の文化を広く発信する。
「キラキラだけではない“粋な渋さ”こそが銀座の醍醐味」と話す泉二さん。その粋とは通う人が作るものでもあり、創業年の長さは銀座で残り続ける品質も意味する。
「行きつけを多くもつ銀座の人は、店に“居心地”を求めています。新店にも行くけれど居心地が悪ければ通いません。客がしっかりしていて、良しあしを判断する審美眼をもつ。
つまり、仕事や料理の丁寧さに、客がついてくるのが銀座だと思います。みんな品を意識し、店の雰囲気を引き立たせる粋な方が多いですね」
そう話す泉二さんの銀座ハシゴのテーマは、「銀座にしかない隠れ家を巡る」。
通りからは見えない店をよく知り、「銀座は遊ぼうと思えば朝までいけます。7〜8丁目のバーは朝4時くらいまでやっていますし、遅くに食事できるお店も多いんですよ」と、深い時間まで飲むことも多い。
ちなみに着物姿では酔わないそうで、「帯がないほうが楽しく酔えます(笑)」とのこと。銀座の粋が詰まるコースには想像以上の趣があった。
【1軒目/17:00 START】酒器と人が織りなす音がBGM。ここで銀座の夜が静かに動き出す
『はち巻岡田』

「松屋銀座」裏の「あづま通り」沿いを少し奥に入った路地に立地。のれんには常連だった文化人たちの句がつづられている。作家・里見 弴氏が同店の美味しさを「舌上美(ぜつじょうび)」と表現した筆書きが目を引く
銀座遊びの始まりは、屈指の老舗から。銀座3丁目にある『はち巻岡田』の創業は1916年。
歴史好きな泉二さんは、激動の時代を生きた創業者の物語も知る。
「関東大震災のあと、店主・岡田さんの祖父が“復興は食なり”と銀座復興の旗振りをしたそうです」と、受け継がれる“江戸料理”を楽しむ。
それは鶏出汁の「岡田茶わん」や「田楽」などの控えめながら滋味深い料理。
日本酒は潔く「菊正宗」の樽酒のみ提供というのも老舗の粋だ。
【2軒目/19:30】ギラつく8丁目の中で異彩を放っている。粋な佇まいが大好きなお店
『あるぷ』
泉二さんが「“銀座を案内してほしい”と頼まれるとまず1番に推すお店です」と話すのがバー『あるぷ』。
銀座8丁目、ディープさ満点の路地の奥に位置する扉の先は、時代も国も不明に感じる空間。
1961年当時のオーナーがヨーロッパ中を巡り、各国で感化された装飾をちりばめたからだ。
重厚な階段を上ると壁には藤城清治の影絵まである。同店に立つママは81歳、最高齢の常連は104歳!
銀座ワンダーランドすぎる2軒目なのだ。
【3軒目/22:00】居心地の良い空間で、気づいたらボトル1本を空けてしまう!
『pas loin』
3軒目は東銀座『ビストロシンバ』の支店『pas loin』。
「2022年の開業時から通い、多い時は週2。料理も丁寧に出してくれるのが嬉しいです」と立ち飲みでふらっと訪れる。
ナチュラルワインをグラスで15種ほど用意し、「1杯のつもりがボトル1本飲んでしまうことも」と泉二さんが言うように、つい飲み進めてしまう空気が流れる。
『ビストロシンバ』で作った料理もそろい、名物「ブイヤベースのリゾット」は飲んだあとに沁みる逸品。
【4軒目/25:00】“泰明ビル”の地下に潜む隠れ家で、銀座の夜が更けていく
『PTA』
「だいぶ酔っ払ってから行くから、『PTA』はたいてい記憶がない(笑)」と泉二さん。
朝5時まで営業するバーで、泉二さんが行くのは1時過ぎだ。
そんな終着駅となる店のテーマは、“よく遊んできた大人に、いい音響の中で楽しく飲んでもらう”。
それが叶うようにクラブのごとく低音がきれいに響くスピーカーを4台設置。毎週土曜はDJが来て、客が紙に書いたリクエスト曲を流す。
青く暗い空間で音に身を委ねれば、なんとも刺激的な〆となる。
若旦那と大将が語る“銀座の粋”な遊び方
ともに銀座で長く働く岡田さんと泉二さんの出会いは15年前。銀座で商売をする者が集まる青年会で会い、泉二さんは“寿し幸”に通うように。
銀座遊びは年齢層が高い印象もあるが、そうでもないと話す。
泉二:銀座って実は本来ベンチャー気質な街。新旧が出合う街で、新しいものや人を寛大に受け入れます。そのあと銀座の気高さみたいなものに、いい意味でもまれて成長していく。
昔の文献だと知識人が集う“インテリゲンチャ”の街で、若者が新しいものを見に来たそうです。そういう気質は絶対残っているので、いろんな人たちに来てほしいなと。
岡田:「いいものはいい」と経験できる街ですからね。レストランでスーツを着たスタッフが、すっときれいな所作で接客してくれる時とか。
泉二:お昼を『煉瓦亭』で食べて優雅な気持ちになったり、夜に老舗を巡ったりもできます。そういう経験は、「大人になった」「飛び越えたな」と満足感を得られる瞬間。銀座はそんな“地力”があると思います。
岡田:店が新しい人を迎えられるのも、お客さまに救われて、続けられているから。銀座で遊ぶ大人はばか騒ぎする人はいなくて、常に周りも気にしてくださる。例えばうるさい人がいると常連さまが注意してくださいます。僕らじゃ言いづらいから代弁してくださってありがたいです。
泉二:僕も同じような格好いい老紳士に店で遭遇したことがあります。粋な方が多くて、僕らもお客さまに育ててもらっています。
そう話すふたりが思う銀座歩きの面白さは、“何丁目にいるか”で印象がガラリと変わること。
泉二:特に6〜8丁目に来ると華やかさが増して、僕みたいな3〜4丁目の人間からすると非日常に入る。
岡田:1〜2丁目とも違いますね。
泉二:本当にいろんな顔があって、銀座は格好つけることも砕けることもできる。“寿し幸”さんがある7丁目は遅くまで開くお店も多くて、こちらで鮨で〆ることもできます。
岡田:だいたい深夜1時半まで灯りはつけています。遅い時間帯は10分前にお電話いただければ。
泉二:そんなふうに最後7〜8丁目で飲んで帰るとき、「中央通り」を渡った瞬間、ひとつの世界を抜けた感覚に陥ります。今日も面白かったなと思うと同時に、ちょっと寂しい。ずっといたくなる街なんですよね。
岡田:僕も「中央通り」を渡り家に帰るけど、1丁目まで一直線に道が延びて、左手に和光さん、右手に三越さんがあって。何回見ても、きれいだなって思いながら帰っています。
泉二:夜になれば高揚と刹那を感じる街、それが銀座の魅力なのかも。
銀座の人が集う鮨店『ぎんざ 寿し幸』
1935年開業の老舗鮨店『ぎんざ 寿し幸』。壁には武者小路実篤が同店のために描いた絵が掛かる。
奇をてらわない江戸前鮨を提供し、おこのみも可。コース¥17,000~。
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