
「何が正解かなんて誰にもわからないですよね」北山宏光が、南麻布の“焼き鳥”店で語る本音とは
南麻布に店を構える『利行』は焼き鳥と日本ワインを楽しむことができる洒脱な店だ。
そんな一軒を訪れたのは大人の男の色気が増した北山宏光さん。
「大好物」という焼き鳥を堪能してもらいながら、歌手として、そして俳優として活躍の幅を広げるいま、思うことを聞いた。
「自分の言葉や表現が、誰かの心を動かせるチカラになるように」
現場に現れた北山さんは、心なしか以前よりもシャープで研ぎ澄まされた印象に見えた。2ndアルバム『波紋-HAMON-』をリリースし、ツアーを間近に控えるいまの思いを聞いた。
引き締まった表情から静かに丁寧に紡がれる言葉にはいっさいのごまかしや取り繕いがない。ひと皮むけた大人の男とはこういうものなのか、とブレない心の在り方をもっと知りたくなる。
「芯を持った人に憧れるし、自分でもそうありたいとは思いますが、実際は、そんな(笑)。
仕事仲間や友人とごはんに行ったり飲むことが好きで、そういうときはお酒も飲むので、ふにゃふにゃな骨抜き状態になっていることもありますよ」と照れ笑い。
6月に発売された待望の2ndアルバムが話題を呼んでいるが、このところ“表現する”ことに対する北山さんの思いがますます高まっていると話す。
「今回のアルバムで、表現したかったテーマのひとつが喜怒哀楽です。
歌詞を書くとき、いろいろな思いに心が押しつぶされそうな時期もあって。物事の本質ってなんだろう、誰かが決めた正解にはどんな意味があるのだろうということがずっと頭にありました。
すべてのことにはあらゆる側面があってはっきりと何が正解かなんて誰にもわからないですよね。光の中で輝く人もいれば、闇の中でしか生きられない人もいるんじゃないかなと僕は思います。
そういう気持ちを自分の言葉にしたときに、バッシングされる怖さもあるけれど、その思いが届く人、受け取ってくれる人に伝わればいいって。それが誰かのチカラになれたらいいという気持ちを込めました」
進化する心を持ち続けることで“現状”を維持したい
自分の感性を磨き、高めるためのインプットは欠かさないが、北山さんにとって旅に出るのも、そのひとつだ。
「ほとんど弾丸なんですけれど、去年もニューヨークやLA、韓国などプライベートでいろいろ行きました。ショーを観たり、ラスベガスでは念願の『スフィア』にも行くことができて嬉しかったです。
巨大な高解像度のスクリーンが設置された球体型のエンターテインメント施設なのですが、もうテンションが上がりっぱなしで(笑)。
そうした刺激を受けることでどうやって自分の演出に生かしていこうかと、一緒に作品や舞台をつくるスタッフとの共通イメージを持つことを大切にしたいんです」と少年のように目を輝かせる。
新しい土地で出合う食文化も旅の楽しみのひとつで
「韓国では、夕ごはんを3回も食べました(笑)。初めて焼き肉スタイルの鰻を食べたのですが、これは日本でも流行りそうだなと思いました。腹開きにした鰻をロースターで焼いて、ごま油と塩につけて食べる。そこでは、天然よりも養殖の鰻が美味しいと聞いて勉強になりました。
国内だと去年、沖縄で食べた豚のしゃぶしゃぶも美味しかったです。意外かもしれないですが、僕はけっこう食い意地張ってるんです(笑)。
7月からは全国ツアーで11都市を回らせていただくのですが、各地で美味しいものを食べるのも、とても楽しみにしています。公演に合わせてグルメロケもしようかな(笑)」
と食にかける熱い思いを饒舌に語る、チャーミングな一面も見せてくれた。
日々の食事を通して表現することに欠かせない体を大切にする。そういう意味でも、北山宏光はブレないのだ。
「新しい挑戦を楽しむ心が、新鮮な自分を保つベースづくりに」
北山さんがエンターテインメントにかける思いは、言葉の端々から確かな熱をもって伝わってくる。
自分の中でゆっくり咀嚼をするように少し考えながら発する言葉には、その世界で生きる人間の覚悟と責任がにじんでいるようにも感じられる。
11月には6年ぶりの主演舞台となる『醉いどれ天使』の公演を控えるが、歌手と俳優で“表現方法”は異なるのだろうか?
「昔は違うという感覚だったのですが、いまは同じだと思っています。アウトプットの方法は違うけれど、エンターテインメントという意味でくくれば根底はつながっていると、僕は思います。
歌うときでも、てにをはの部分にしっかり思いをのせたり、逆にそこの部分を強調しすぎず余白を持たせることで曲の世界観を“演じる”こともあります。番組のナレーションではどれくらいの間を置いたら言葉がより伝わるのかと意識することも。
僕は自分のことを器用貧乏だと感じていて。でも悪いことだとは思っていなくて、たとえばずっとミュージカル1本でやってこられている役者さんには勝てないけれど、いろいろな方法を織り交ぜながら僕なりの表現世界を持ちたいと思って」
少し間を置いて「結局、現状維持が嫌なんですよね」とぽつり。その言葉に、いままで語られなかった心の芯の部分が見えた気がして、理由を尋ねると、そこにはいわゆる“現状維持”とは違った、北山さんならではの思いが。
「常に挑戦するためには土台が必要だし、維持したいからこそ、変わり続けなくてはと自分に言い聞かせています。
あの人、なんであんなに焦っているんだろうと思われるかもしれないけれど、新しいことをどんどんやることでしか維持できない“現状”もあると思うから。
ゼロからひとつのものを生み出すのは、もちろん苦しさも伴いますが、その作品が誰かの心を動かすこともある。それが自分の大きな原動力になっています」
日本のエンターテインメントがこの先どんな未来へ向かうとしても、その中心にきっと、北山宏光は立ち続ける。
■プロフィール
北山宏光 1985年生まれ。2ndアルバム『波紋-HAMON-』リリースに伴い、7月からソロツアーを開催。11月からは巨匠・黒澤 明と三船敏郎がタッグを組み、日本映画界に金字塔を打ち立てた『醉いどれ天使』の舞台で主演を務める。
■衣装
シャツ¥114,400、パンツ¥148,500〈ともにBERLUTI/ベルルッティ・インフォメーション・デスク TEL:0120-961-859〉、ネックレス¥634,700、ブレスレット¥441,100、ピアス¥135,300、リング¥686,400〈すべてREPOSSI/レポシ日本橋三越本店 TEL:03-6262-6677〉
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