レストランを予約してその予定を書き込むとき、私たちの心は一気に華やぐもの―。
なぜならその瞬間、あなただけの大切なストーリーが始まるから。
これは東京のレストランを舞台にした、大人の男女のストーリー。
「好きになってはいけない男性」千夏(30歳)/『虎ノ門 とだか』
「どうしよう…」
オフィス内のカフェテリア。私はコーヒー片手にスマホの画面から指を離せずにいた。
そこには「本日20:00。カウンター1席 募集致します!」の文字。
このInstagramのストーリーズがアップされたのは数分前で、発信元は『虎ノ門 とだか』の公式アカウント。五反田の『食堂とだか』の系列でオープンから間もなく予約困難となった店だ。
外資系IT企業の営業職。年収には満足しているし、広尾のマンションで猫も飼っている。しかし、先日30歳を迎えた私には唯一足りないものがあった。
それは、彼氏だ。
私には“当日気軽に誘える異性”がいない。ともすれば、選択肢はひとつ。
― よし。ひとりで行こう!
迷っている暇はない。友達の予定を聞いている間にも先約が現れるかもしれないのだから。
私は心臓が高鳴るのを感じながら、素早く、しかし丁寧な文章を心掛けてDMを送った。
「どうか…お願い!」
その願いが通じたのか、無事にお店側から返信をもらい、私は貴重な席をゲットすることに成功した。
こんなチャンスは滅多にない。
私は急いで仕事を片付け、オフィスを飛び出し、虎ノ門ヒルズのビジネスタワーを目指した。
この記事へのコメント
ご縁のある人とはなぜか偶然会うんだよね、不思議と。
そして煮卵の写真がめちゃくちゃ美味しそうで。雲丹というよりこぼれいくらがどっさりで今すぐ食べたいーーー。
最初、千夏から誘ってみるのもとても良かった!