運命なんて、今さら Vol.13

出会って4ヶ月、お泊まりしたいけど日帰りで遠出に誘う彼。32歳奥手男子の本音とは

結海が、こちらをじっと見ている。

― ああ…。夕日を見ながら、穏やかに言うって決めてたのに。

思いが溢れ出て、すぐに言葉になってしまった。自分らしくない。

心臓が止まりそうな寿人の耳に、結海の優しい声がそっと届いた。

「はい。…すっごく、すんごくうれしいです」

結海は、うるんだ目で寿人を見て、それから空を見上げた。


つられて見上げた青空は、嘘みたいにキレイだった。鳥の群れが、北のほうに飛んでいく。

「…幸せです。僕」

寿人は今この瞬間、孤独だった未来に光がさして、人生の意味が少し変わったのを感じた。

結海に出会うまで、特に未来を変えたいだなんて願っていなかったはずなのに、今、それがとてもうれしい。

そのとき、ジリジリという音とともに、ちょっと焦げ臭い香りがした。

「あ、お肉!」

2人して箸を割り、慌ててすべてをお皿に上げていく。

「ああよかった、焦げてない」

うわずった寿人の声に、結海はケラケラと笑った。

告白したばかりなのに、ムードはない。情けない。でも、結海は、心底楽しそうにしてくれている。

結海が自分の恋人になってくれたなんて。寿人の胸は、静かで美しい驚きに包まれていた。

不意に、結海の右手が、寿人の左手に重なる。

「寿人さん。ありがとうございます」

寿人は、手のひらの向きを変えた。

そして、たった今手に入れたその幸せを、ふわりと包み込んだ。

2年後 《華SIDE》


振袖を着るのは成人式ぶりか。華はうっとりしながら思う。

成人式では白地の振袖を着たが、今日は赤がベースのものを選んだ。

― 結海さんのドレスと被ったら、申し訳ないもんね。

結婚式に出るのは初めてだ。それが、兄の結婚式だなんて。寿人のことをなんだかんだいって大好きな華は今、心からワクワクしている。

海。ランドマークタワー。大きな観覧車。

― みなとみらいで挙式なんて、いいなあ。私もいつか結婚、してみたいなあ。

華は早稲田大学を卒業し、大手飲料メーカーに入社。この春で2年目になる。

これからもきっと、いろんな出会いが待っている。自分も、寿人や結海のように幸せを見つけたいと思う。

「ちょっと華!振袖のときは、そんなに大股で歩かないの」

「そうだぞ、ゆっくりで大丈夫だ。親族の集合は9時で、まだ時間には余裕あるから」

背後から、両親の声がする。2人は、今日のために軽井沢から、式場がある横浜まで来ている。

「ちょっと華、待ってよ〜」

楽しそうな母の声。華は、満面の笑みで振り返る。

「だって、楽しみなんだもん!」


▶前回:「友達以上、恋人未満の関係に終止符を打ちたい」32歳奥手男子が提案した渾身のデートプランとは

▶1話目はこちら:「自然に会話が弾むのがいい」冬のキャンプ場で意外な出会いが…

▶NEXT:4月9日 水曜更新予定
ようやく交際に発展した寿人と結海。2人の将来の姿は…?

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この記事へのコメント

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No Name
小説にするような内容でもない気が…。研哉は寿人の職場にまで来るヤバさだったのにブロックされたら簡単に引き下がったのか? いずれにしても結海の好感度が低過ぎてどうしても好きになれなかった。今日で終わりでよかったのになぁ。2年後の華が早稲田を卒業し大手飲料メーカーに入社今年で2年目とか白の振袖ではなく赤にしたとかどうでもいい。BBQの後お泊りしたんだよね?色々と雑な印象。
2025/04/02 05:2825返信6件
No Name
キャンプの日の帰り道寿人さんにまた会えるような気がしたんです
いやいや、また会いたいから実家パンと一緒にわざわざ現金を置いて行ったんでしょうが。
2025/04/02 05:3521返信1件
No Name
えーーーーーー? もしかして結婚後も延々と続く感じなのかな、どちらかが死ぬまでのストーリーで来年までダラダラ続く連載?🤦🏼‍♀️
2025/04/02 05:1620返信4件
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