2024.11.26
良質な温泉を引ける地は、優れた水と土壌も備えているもの。
つまり食材に恵まれたエリアであり、そこに独自の哲学を持つオーナーやシェフがいれば、宿は最上級に。
湯も料理も空間も極上の「温泉オーベルジュ」が温泉の新たな潮流となっている。
湯布院で2023年6月開業にして、さっそくミシュランキー(ミシュランのホテル版)に選ばれたENOWA”を訪れた。
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湯布院が誇る自然の恵みを余すことなくいただく
2023年6月開業にして、さっそくミシュランキー(ミシュランのホテル版)に選ばれた“ENOWA”。
快挙の主役はチベット出身のシェフ、タシ・ジャムツォさんだ。
宿誕生のきっかけも、タシさんだった。
彼は宿オーナーが感銘を受けたNY郊外の名店『Blue Hill at Stone Barns』の元副料理長であり、その店は自社ファームからの乳製品や野菜を使うことに哲学を持つ場所。
大地の恵みの本質を知るシェフの料理と名湯の融合は必ず人を惹きつけると、温泉オーベルジュが造られた。
湯布院駅でゲストを迎えるのは、意外やベントレー。優雅な乗り心地のなか、道中に“ENOWA”の畑があると聞くだろう。
タシさん率いるチームが育てるのは、200種もの野菜。日本で珍しい品種を種から育てることもあり、ズッキーニだけで8種がそろう。
タシさんはチベットの農耕民族の生まれで、家族が作る野菜や親類が作る乳製品を食べて育った。ここでも近隣の酪農家による牛乳でチーズやヨーグルトを作り、もらった牛糞で畑を耕す。
「それが普通だったので」と、風土の循環を表すようなひと皿を提供するのだ。
長閑な田舎道を過ぎて辿り着く宿は、丘に立つ瀟洒な邸宅のような建物。エントランスからは、全国2位を誇る湯布院の湯量を感じる滝が見える。
深い山の中に忽然と現れるインフィニティな湯船に浸かり、リゾートの何たるかを知る
19の客室はヴィラとホテル棟に分かれ、全室78㎡以上の広さ。
無垢の木や自然の形を残す石を配したナチュラルな空間が一瞬でゲストを癒し、ヴィラとなれば三角天井でリゾートの解放感も醸す。
最上階に位置し、森がすぐ隣に広がる「ヒルトップ スカイパビリオン シティビュー」(165㎡)。10mものパノラミックな窓の外に温泉露天風呂とインフィニティプールを完備。山に囲まれた湯布院全域を望み、稜線から朝陽が昇る。2名1泊1室1名¥181,500~(2食付き)
全室に温泉露天風呂と隣にリクライニングチェアを設け、湯上がりに緑のそよぎを感じながら横たわれば、ととのいの時間に。湯と風に肌が喜び、まるで客室がスパ。
ドレスアップしたくなる洗練された空間で美食のひとときを
心地よい空腹が訪れ、最高のコンディションで向かうは本題のレストラン『JIMGU(ジングー)』だ。
ディナーは温室での前菜からスタート。
ハーブや花に囲まれて口にするのは、先ほど採れたばかりの野菜で、ディップソースまで野菜ベースだが、そのリッチな味わいに期待が高まる。
席に着くと贈り物のごとく「野菜のブーケ」に使う野菜が登場。
野性味を放つ生けた姿を目にしたあと、ブーケはアートに変貌する。鮮やかなサフランソースの黄色とアップルバターのピンクの躍動感が心を掴む。
竹墨衣に包まれたズッキーニやガーリックオイルで炭火焼きした間引きにんじんは、メインディッシュと言われても納得の食べ心地だ。
そこにトスカーナの土着品種の赤ワインが提供されるのもにくい。野菜の苦味にほのかなスパイシーさとタンニンが重なり、地方の洗練が極まるのだ。
「お客さんに、湯布院や僕たちの畑に少しでも興味を持ってもらえたら」とタシさん。
翌日、朝風呂後にみずみずしい野菜が並ぶ朝食を食べれば、興味どころか再訪を誓わずにはいられないだろう。
「ヒルトップ スカイパビリオン」のさらに上に、今秋からセルフロウリュのフィンランド式サウナをオープン。天然水の水風呂と、ととのいスペースも設置する。それらすべてが湯布院の街を一望。ふたりきりの会話と絶景を楽しみながら、ととのうことができる。3時間2名¥55,000
■施設概要
施設名:ENOWA YUFUIN
住所:大分県由布市湯布院町川上544
TEL:0977-28-8310
料金:2名1泊1室1名¥72,600~(2食付き)
部屋数:19室
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