身も心も健康でいられるためには、社会的・環境的条件も含め、さまざまな要因が健康リスクを減らしていると考えられますが、私としては「⑤野菜中心の食事」に注目せざるを得ません。
野菜には非常に大きな力があります。その源泉は植物の生存戦略にあります。
植物は動物と違って、逃げることも隠れることもできません。有害な紫外線や土中の病原菌、害獣や害虫から、自らの力で身を守る必要があります。そのため、植物は紫外線による酸化防止や殺菌、解毒、害虫の駆除などに役立つさまざまな成分を、自ら生み出しています。
私たちは野菜を食べることで、こうした有益な成分を体内に摂り入れることができるのです。
では、各地域ごとに、食生活を中心にざっと見ていきましょう。
長寿の国では一体何を食べているのか?
長寿の国々では一体どのような食事がされているのでしょうか。
まず、サルデーニャ島では主にジャガイモ、トマト、フェンネルなどが食されています。フェンネルはセリ科の多年草で、日本ではウイキョウとして知られているハーブの一種です。
また、ブラックベリーやミルト酒など、サルデーニャの森に自生するハーブを取り入れることで、多量のポリフェノールを摂取しており、これが長寿と関係していると考えられます。
沖縄では、いわゆる「島野菜」が有名です。言わずと知れたゴーヤーをはじめ、琉球ヨモギ(フーチバー)、チョーミグサなど、多様な野菜が豊富に存在しています。
一方、ロマリンダはアメリカ・カリフォルニア州にある村で、ここではトマトや種子植物、マメ科植物を中心とした食生活が営まれています。
地中海沿岸や亜熱帯地方であれば、「健康」や「長寿」のイメージと結びつけやすいですが、なぜアメリカ、それもこの地域だけが長寿を誇っているのでしょうか。同じカリフォルニア州の他地域に住む人々と比べると、この村の住民は平均寿命が10年も長いのです。
その秘密は、多くの住民が持つ信仰にあります。この村はセブンスデー・アドベンチスト教会というキリスト教プロテスタントの一派が作った村であり、信仰上の理由から菜食主義が徹底されています。
ニコヤ半島は中米コスタリカにあり、イグアナが生息している地域として知られています。ここでも、カボチャ、トウモロコシ、全粒穀物などが中心の食事をしています。
住民の多くはアメリカ大陸の先住民であるモンゴロイドであり、マヤ文明やアステカ文明から伝わる長寿の知恵を受け継いでいるのではないかという見方もあります。
最後にイカリア島ですが、エーゲ海に浮かぶ人口1万人にも満たない小島で、ヨーロッパの他地域と比べて90歳以上の人口比率が10倍近いことで知られています。
調査時点では、70歳以上の高齢者の中に、認知症を発症している人が1人も見られなかったという点も驚くべきことです。
ここでの食事は、季節の野菜、キノコ、豆腐、山羊のチーズなどを中心とした素朴な田舎料理が主流で、肉はあまり食べず、月に一度程度食べることがあるくらいだといいます。
もともと肉が貴重だったため、自然と野菜中心の食生活が根付いたようです。葉物野菜を茹でて、たっぷりのオリーブオイルをかけて食べるのが一般的です。
こうして見ると、野菜中心の食生活こそが健康長寿の秘訣として大きな役割を果たしていることに間違いはなさそうです。
そもそも、なぜ野菜を食べることが体に良いのでしょうか。その理由のひとつは「抗酸化作用」にあります。抗酸化作用とは、体を錆びつかせ老化を促進させる「活性酸素」を抑える働きのこと。その抗酸化作用を持つ成分が、さまざまな野菜に多量に含まれているということです。
また、ブルーゾーンと呼ばれる多くの地域は紫外線が強い場所でもあるため、そこで生育する植物はアントシアニンなどの抗酸化成分を多く産生します。これらの成分を積極的に摂取することで、老化を防ぎ、長寿につながっていると考えられます。
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