オトナの5分読書 Vol.33

「ToDoリスト」は捨てていい。タスク管理を完璧にしても、結局“時間が足りない”ワケ

4. 「時間」を投資しない=ダラダラ漫画を読むことも必要な時間


職場で自分を取り繕うと、人は消耗します。

少しでも早く回復するために、帰宅してからしばらくはダラダラしたいものです。そこでやっと「本来の自分」が生き始めるのです。

あるがままの自分を押さえつけ、ムリな我慢を自分に強いれば、誰でも必ず消耗します。

職場から出たら徹底して「本当は私はいまなにをしたいのか?」だけを自問しましょう。そのことだけに集中してみるのです


スマホでマンガを読みたいのが本当の気持ちなら読みましょう。カツ丼が食べたいなら食べましょう。

「それでは時間がもったいない」とか「健康に悪い」とかいった「概念」に惑わされないようにしてください。これらの「概念」の多くは、「世間からのアドバイスだ」とあなたが信じている言葉のことです。

たとえば、私は運動をしませんし、英語や中国語といった語学の勉強もしません。デザインやプログラミングのスキルを身につけていません。

投資もしていなければ、老後に備えた貯蓄もまったくありません。

人生の目標はなにももっていないし、明日の計画すら立てていません。記録もメモもほとんど手元にはありません。

以上のどれもなんの自慢にもなりません。

ただ私は50歳になり、「“未来への投資”という名目で現在の時間を少しでも犠牲にするのは虚しいものだ」とつくづく思い知ったのです。

「未来への投資」が十分に意味をなすには、わずかにせよ先が読めなければなりません。

日本人の多くがいまもなお、英語の勉強に精を出すのは、将来の役に立つと思うからでしょう。5年後には世界で誰も英語を話さなくなるのが確実になったら、英語の学習産業はただちに崩壊するはずです。

私は未来をまったく読めません。1分後もわかりません。「老後」に至っては存在すらあやしいものです。

私は40歳になった頃に「未来への投資」を諦めました。するとたちまち、少なくともそれまで経験しなかったほど心が穏やかになりました

ここで伝えたいのは、「未来への投資」は「消耗コスト」を伴うというひとつの事実です。「投資」の時間は「犠牲」の時間でもあるのです。

犠牲はなるべく減らしたいものです。減らすのはムリでもむやみに増やさないようにしましょう。それだけでもぐっと心の消耗をおさえられるようになります。

5. どんな状況でも時間はいくらでもある


「時間はなくならない」「時間は豊富にある」と私がいくら主張しても、信じてもらえません。私たちは「時間が足りない!」という考えを叩き込まれてしまっているからです。

私は人生のどんな時期にも、およそ「時間がなくなった」経験はまだありません。

もちろん「締め切りまでの日数が足りなくて忙しい」との気持ちに焦らされたことはあります。とはいえ、それはあくまでも「締め切りまでの日数」が少ないのであって、時間がないのとは根本的に異なります。たとえ原稿の締め切りを迎えてしまったとしても、時間はなくなりません。

私は原稿の締め切りが過ぎても、原稿を放置して家族でディズニーランドに出かけることだってできます。これが時間を使えるという意味です。

でも、そんなことをしたら良心が咎めるでしょう。だから「心が消耗する」のです。

「良心が咎める」のと「時間がない」のを、ごちゃまぜにしてはいけません


多くの人が、時間のやりくりに気をもむのは、締め切りを破る罪悪感を持ちたくないからです。

つまり良心が咎めないようにするために、私たちは時間のやりくり上手になりたいわけです。そのために「時間術がある」と思い込んでいます。

しかし、それはまったくの誤解です。世に時間術はそれこそ豊富にあり、しかもいずれの時間術でも「時間がない問題」は解決されていません。あいかわらず人々は締め切りに追いまくられ良心が咎め、心を消耗しています。

「時間術」に期待するのは、もうやめましょう。すでに述べたとおり、そもそも締め切りの設定が間違っているのです。

しかし、締め切りを正しく設け直す権力がないとしたら、いったいどうすればよいのでしょうか。

その答えは、「良心を痛めないこと」に尽きます。

締め切りまでの日数が足りなくても、時間は豊富にあります。心ゆくまで時間を使って仕事にじっくりと取り組まれます。それでは締め切りに間に合わないかもしれません。しかしそこで焦ってはならないし、心を痛めても意味がありません。

他人からキツく叱責されたり、メールで厳しいことを書かれたりするのを怖がらなくて大丈夫です。そんなものは「音声」にすぎず「テキスト」にすぎません。

本当に「恐れ」を排除できて、心のスペースに余裕が生まれたら、そのスペースを使って仕事をグンと進められます。



本書の主張には首をかしげる人も多いでしょう。

一般の仕事術はもう少し、「目標」や「計画」を大切にします。

その点、私は2日目以降の計画を立てることを勧めませんし、個人的には目標を一切持ちません。また「時間は希少価値があるから大切にすべき」というのも常識です。

しかし本書の主張は、それとは真逆です。「時間はいくらでもあるのだから、好きなように好きなだけ活動すればいい」というのが私の言いたいことです。

さらに、時間を投資しないとも言っています。こう考えるに至った理由があります。

30代後半の頃、アメリカで心理学を勉強して帰国したあとに、ようやく私は社会人としてまともに働き出しました。

当初はごく普通の「仕事の仕方」でオンラインの連載を書き出しました。しかし急速にこのやり方ではいけないと思わざるを得なくなりました。

それまでの長期計画を1週間に縮小し、逆算をやめ、目標設定は捨てました。私は24時間で72時間ものタスクを実行する気でいたのです。リストの項目はごっそりと減り、「やりたいこと」も消え失せました。私は諦めることを学んだわけです。

「やること」より「やらずに済ませること」をはっきりさせるのです。

私はプログラミングと英語とデザインスキルとアナログを捨てました。するといわゆる「費用対効果」は抜群に高まり、日々の大量のタスクが魔法のように片付くのでした。

その流れに乗るようにして、仕事が次々に舞い込みお金にはまったく困らなくなりました。

6. 本書のココがすごい!


今回紹介した『「ToDoリスト」は捨てていい。時間も心も消耗しない仕事術』佐々木正悟著(大和出版)のすごいところは下記に集約される。

①これまで時間術や仕事の効率化というテクニックについての著書を出してきた佐々木さんが発する『「ToDoリスト」は捨てていい』という言葉には重みがある。まさに時間も心も消耗しないということが、仕事術において大事だということを痛感できる。

②今回は紹介しきれなかったが、消耗する“人間関係“をやめるということも仕事術で大事なことだと気付かされる。


【著者】 佐々木正悟(ささき・しょうご)


1973年北海道生まれ。タスクシュート協会理事。ビジネス書作家。
1997年 獨協大学外国語学部を卒業。
2004年 Avila University心理学部を卒業
2022年 タスク管理・時間管理術であるタスクシュートの普及と、自分らしい時間的豊かさの提唱を目的として「一般社団法人タスクシュート協会」を設立。タスクシュートのユーザー数は、25,000人を超える。

著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(ともに共著、日本実業出版社)、『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)、『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などのほか、『iPhone情報整理術』(共著、技術評論社)がある。

X:https://x.com/nokiba
公式HP:https://nokiba.github.io/index.html


▶NEXT:10月17日 木曜更新予定

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