前回:「本物かどうかなんて、他人は興味ない」元カノの恨みが加速し、SNSで流出した“ある写真”とは…
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西麻布の交差点を、広尾方向に少しだけ越えた外苑西通り沿いに車を停めた伊東さんは、すぐに私の荷物を受け取り、後部座席に置きながら、シワになりたくない服とかあれば吊るせるけど、出しとくものある?と気遣ってくれた。
大丈夫ですと伝えると、流れるように助手席のドアを開けてくれて、最初だけでもエスコートの真似事をさせて、と笑った。
ありがとうございますと乗り込むとドアが優しく締められる。今更ながらドライブといえば2人きりの密室であるという自覚に伴う少しの心拍数の上昇を感じながらも、それを何とか抑え込み、平常を装うことに成功した。
伊東さんのシワになりたくない服があればという気遣いは、レストランでの食事に必要な着替えのことだ。
車で移動するのにキレイな恰好は疲れるし、レストランの周りの自然が美しいらしいから気が向いたら散歩しようという伊東さんの提案で、スニーカー仕様の服装で待ち合わせしたのだけれど。
これから向かうオーベルジュは、権威あるレストランガイドにも掲載されていて、食事の時にはスマートカジュアル以上の恰好をした方が…ということで着替えを持参することになっていた。
愛さんにそのことを相談したら、シワにならない素材のワンピースが素敵なブランドがあるの!と愛さんが旅行先でのドレスアップに愛用しているというイタリアのブランドのワンピースをお勧めしてもらい購入した。
「伊東さんなら、シワを気にする気遣いも準備もしてきてくれると思うけど、せっかくのカジュアルからドレスへの変身、その恰好を先にばらしちゃうのって勿体ないよ」
あどけない宝ちゃんからグッと色っぽく変身してドキドキさせようよ~と笑った愛さんに、デートを楽しむ姿勢を学ばせてもらった気がする。
到着までだいたい2時間半くらいの予定だから、14時には着くと思うと教えてもらい、高速に入る前に広尾のカフェに立ち寄ることになった。運転のお礼にせめてもと、私が買いに行くことを譲ってもらえて、ホッとする。
到着は14時予定。ランチには少し遅いけど、フルコースを食べる予定なのでお腹を膨らませすぎないようにしようと、クロワッサンと小さなショコラパン、カフェオレを1つずつ。
日本には自分の車がないからカーシェアで…と借りてきてくれた車。私は車には詳しくないけれど、久しぶりの右ハンドルだけど運転しやすいと楽しそうな伊東さんは、きっと車も運転も好きなのだろうと微笑ましく思った。
「わざわざ伊豆まで2時間半かけて行くってことが、2度目のデートとしてはどうなんだろうと考えたりもしたんだけど…」
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この記事へのコメント
愛さんも下着プレゼンとか、優しい♡
伊東さんと宝、更にうまく事が進みますように🥺