年収4,000万男子の恋愛事情 Vol.1

「LINE交換しませんか?」麻布十番の鮨店で出会いあり。年収4,000万男子の恋愛事情とは


「こちらにはよく来られるんですか?」

男性に話しかけられ、俺と元太は顔を見合わせる。

年齢は、50歳くらいだろうか。

黒ぶちメガネにパーマが特徴的で、体は縦にも横にも大きく、一度見たら忘れられない風貌をしている。

「…僕は何度か来させていただいていて。彼は今日が初めてです」

そう答えると、男性の顔がほころぶ。

「そうですか!ここ、本当に美味しいですよね。僕もお鮨大好きなんですが、一緒に行ってくれるグルメ友達が少なくて…」

男性はそう言うと「秋山雄三郎 AKYM-DINING,INC. 代表取締役」と書かれた名刺を差し出した。

― 飲食店オーナーか…。

そう思っていると、元太が笑顔で秋山に食いつく。

「おぉ。社長さんなんだ、すごい!こいつ…翔馬も一応アパレルの会社やっていて社長なんですよ。やっぱり港区は経営者がゴロゴロいるなぁ」

さすが営業マンだ。口を開けば、お世辞がすらすらと出てくる。

「そうなの?若いのにすごいね。それは女の子たちが喜びそうだ」

― 女の子たち…?

疑問に思いながらも、俺は秋山との会話は最小限にして、目の前の握りに集中する。

カウンター席のみの店だと、こういう一期一会はよくある。しかし、あくまで今日の主役は鮨。


この店の鮨は、繊細でありながらしっかりと旨みを感じられる逸品であり、味を覚えていないなんて事態は避けたいのだ。

「いやぁ、親友が稼いでてラッキーだわ。ありがとな、翔馬」
「はいよ」

食事が終わり、俺は元太の分も会計を済ませる。

高級店に行ったときは、大抵俺がおごることになっている。なぜなら年収は4,000万程度と元太より明らかに稼いでいるからだ。それに去年、会社をひとつ8億円で売却したからそれなりに余裕はある。

そのことを知っているからか、同級生におごってもらうことに対し、彼は何の引け目も感じないらしい。時々、その能天気さがうらやましくなる。

「はぁ、美味しかったな……あれ?さっきのおっさんだ」

店を出て、青山の自宅までタクシーで帰ろうとした時、薄暗い道の端っこにメガネパーマが佇んでいるのが見えた。

軽く会釈をすると、秋山が近寄ってきた。そしてそのまま彼に誘われ、近くのバーへ行くことになった。

この記事へのコメント

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No Name
犬種に詳しい元太w
2024/09/13 07:0418
No Name
脳天気な元太が実はやり手で、クールに決めてる翔馬がダメ男だった。そんな展開にならないかな。秋山さんも一見紳士だけど、裏がありそう。
2024/09/13 05:3810
No Name
ずいぶん翔馬は斜に構えてるね。
2024/09/13 06:0410
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